2018年01月05・12日 1509号

【ミリタリー・ウォッチング/米軍・自衛隊事故頻発の理由/日米軍事活動の劇的変化が命奪う】

 12月3、4日、航空自衛隊浜松基地の沖合の海底から自衛隊ヘリ乗員2人の遺体が相次いで引き上げられた。2人は、10月17日夜間の捜索訓練のため浜松基地を離陸した空自UH60J救難ヘリコプターが約10分後に墜落、乗員4人全員が行方不明になっていた事故の犠牲者だ。

 この間の米軍、自衛隊を問わぬ軍用機や艦船事故の頻発は異常である。

 2016年12月、普天間基地所属のオスプレイが名護市で墜落、大破。以降に限っても、17年8月には普天間基地所属のオスプレイがオーストラリアでの多国間演習中に着艦(佐世保基地の揚陸艦グリーン・ベイ)に失敗、3人の兵士が死亡した。9月には、「イスラム国」(IS)掃討作戦中のシリアで墜落事故が起きた。いずれも「クラスA」(米軍の事故評価基準。死者が出た場合や機体の被害額などが200万ドル相当の場合)の重大事故である。国内でも9月、エンジン異常で大分空港と新石垣空港に緊急着陸、一時滑走路閉鎖という事故を起こしている。

 オスプレイだけではない。1月には普天間所属のAH1Z攻撃ヘリがうるま市伊計島の農道に不時着。6月には、CH53E大型輸送ヘリが「警告灯がついた」として県営久米島空港に緊急着陸した。さらに、米軍艦船関係では17年、横須賀基地所属の米イージス艦2隻が衝突事故(6月に南伊豆沖で民間タンカーと衝突、乗組員7人死亡。8月にシンガポール沖で民間タンカーと衝突し、乗組員10人死亡)により死者17人を出した。直近では、沖縄県東村(ひがしそん)高江の民有地に普天間基地所属のCH53Eが10月11日、墜落、炎上。12月7日には宜野湾(ぎのわん)市内の保育園の屋根に同ヘリの部品の一部が落下。12月13日には宜野湾市の普天間第二小学校の校庭にこれもCH53Eが機体の一部(窓枠)を落下させた。一歩間違えば、児童、園児の命を奪う重大トラブルであった。

 自衛隊の事故、トラブルも相次ぐ。5月、陸自札幌基地の連絡偵察機が山中に墜落(4人死亡)。8月、海自大湊基地の哨戒ヘリ海上墜落(3人死亡)。10月、冒頭に記した空自浜松基地の救難ヘリ海上墜落(4人死亡)。空自百里基地(茨城県小美玉市)でも10月18日、飛行訓練のため滑走路に入ろうとしたF4戦闘機から出火する事故。訓練中の自殺という異様な事件も起こっている。日出生台(ひじゅうだい)演習場(大分県)で、訓練に参加していた第16普通科連隊所属の隊員が首をつって死亡していた(10月29日)。

 これほどの事故激増の原因は何か。日米の軍事活動の劇的な変化、激化が最大の原因だ。第一に朝鮮半島をにらんだ在日米軍基地の即応体制強化、第二に自衛隊の「対朝・中=南西重視」による西日本での新部隊創設(水陸機動団等)と新基地建設計画進行(南西諸島ミサイル基地建設等)、第三に、15年ガイドライン(日米軍事協力指針)の同盟調整メカニズムによる米軍・自衛隊一体化や16年戦争法による集団的自衛権に基づく「米艦防護」「兵站(たん)支援」とそのための共同作戦訓練の多発化が背景にある。

 米軍や自衛隊の憲法違反の軍事活動をやめさせること。これが日米の軍事活動による事故、事件から住民だけでなく、自衛隊員や米軍兵士の命を守る唯一の道である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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