2018年01月05・12日 1509号

【安倍「雇用改善」のごまかしを暴く 総非正規化、ブラック化にノー】

 「働き方改革」を看板にする安倍首相は、「就業者数185万人増加」「正社員有効求人倍率1倍超え」を「アベノミクスの実績」として宣伝する。それにわずかな期待をかける人びとがいるのは事実だ。だが、その実体は雇用の総非正規化、ブラック化であり、「経済の好循環」などとは全く無縁だ。

非正規が押し上げた微増

 安倍は就業者増の比較の年を2012年とする。同年は、リーマンショック(08年)後の経済危機と東日本大震災(11年)で就業者数が異常に減少した時期である。07年に6428万人であった就業者数は12年には148万人減少、16年に6465万人となった。リーマン以前と比べると、37万人増にすぎない。

 また、総務省「労働力調査詳細集計」によると、12年から16年の4年間で増えた正規労働者は22万人、非正規労働者は207万人。非正規の増加が就業者数を押し上げていることになる。

 07年と比較して、16年の就業者数増を生み出しているのは、介護・保育・医療関係の230万人増。それ以外の職種は逆に193万人減少している。製造業は125万人減、農林業は49万人減、卸・小売業は16万人減。自営業主・家族従業者等はこの4年間で26万人減。製造、販売など経済発展にかかわる根幹部分はやせ細っている(図1)。


あくまで"限定"正社員増

 正社員数の推移では、07年から急激な減少が続いたが、15年から増加傾向が見られる(図2)。しかし、これもそのまま喜べる現象ではない。

 14年から15年にかけて、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのパート・アルバイト約1万6千人の「正社員」登用や、日本郵政グループの「地域限定正社員」(新一般職)制度がスタートした。安倍政権が進める「多様な正社員」制度が本格的に導入され、賃金も労働条件も従来の正社員の半分程度の新たな「正社員」が生み出されてきているのだ。

 厚生労働省「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」(12年)によると1987の企業、約158万人の社員の内、限定正社員は32・9%の52万人、いわゆる正社員は64%101万人、正社員の3人に1人は限定正社員である。5年後の現在、この傾向はさらに加速している。今、非正規労働者が全体の40%といわれるが、実は正社員の中に非正規労働者と同等の労働条件の労働者が多数存在するのが実態だ。


求人倍率上昇の真相

 有効求人倍率の上昇も、安倍の言う「経済の好循環」の結果ではない。

 最大の要因は、生産年齢人口(15歳〜64歳)の急激な減少である。16年の生産年齢人口は10年前と比較して717万人減少した。働き手となる人口が減少すれば、求人に求職者が追いつかず、有効求人倍率が高くなるのは当然だ。

 第2の要因は、労働現場の過酷な実態である。有効求人倍率が高い職種では、労働がが過酷なため離職する人が多く人手を確保できないという悪循環が起き、有効求人倍率を押し上げている。

 飲食店や宿泊施設などのサービス業を含む「接客・給仕の職業」の有効求人倍率は、3・92倍と全国平均を大きく上回る。離職率は、30%と全産業で最も高い。非正規雇用が多く、低賃金であること、残業代未払いや長時間労働などのブラック企業が多いことが原因している。

 脳・心臓疾患の労災支給件数が最も多い自動車運転手の有効求人倍率は2・75倍、介護サービスで3・63倍、保育士などで2・64倍となっている。いずれも有効求人倍率を上昇させているのは、劣悪な労働実態である。

 高齢化と働く女性の増加によって介護・保育・医療では求人が急増しているのに、離職者が相次ぎ、求職者は少ない。介護報酬を削減し、保育労働者の低賃金を放置し、労働条件を改善しようとしない安倍の政策がその原因だ。

 こうした分野の労働条件は劣悪であり、離職率が高く、求職者が少なく、それによって有効求人倍率が高くなっている。それは、人間らしく当たり前に働ける職場がなくなっていることを意味する。アベノミクスの「実績」ではなく、それがつくり出した労働破壊そのものである。

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 ごまかしの「雇用改善」宣伝の上に、「働き方改革」と称して長時間労働を合法化し、正規非正規の差別を温存し、残業代ゼロ、定額働かせ放題を進める。人間らしい労働を根こそぎ破壊する安倍は退陣させる以外にない。

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