2018年01月05・12日 1509号

【日韓民衆の連帯で東アジアの平和へ/ZENKOスピーキングツアーを終えて】

 沖縄と韓国を結ぶ平和・軍縮のためのZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)スピーキングツアーは、日韓民衆による平和への共闘を大きく広げた。全行程を共にしたZENKOの西岡信之さん、軍縮平和韓日共同行動として来日した韓国の代案文化連帯―軍縮反戦平和実践団ユ・ミヒさん【下写真の右】、ビョン・ヒョンジュさん【写真左】に、ツアーで得たもの、今後の取り組みについて聞いた(韓国の2人は編集部の責任でまとめた)。


平和、脱原発の韓国訪問ツアーを

 2017東京ZENKOでの韓国ゲスト2人の「ZENKO沖縄参加団に参加したい」という感想から、今回のツアーの企画がうまれた。

 2人に沖縄を見てほしいと考えた理由は次のようなものだ。現在の闘いの現場である辺野古や高江に直接触れるとともに、沖縄の米軍基地がもともとは旧日本軍の基地であること、そして沖縄の市民の粘り強い基地反対の闘いの源泉が、沖縄島では3人に1人が犠牲となった地上戦―沖縄戦の体験から来ていることを伝えたい。同じように激しい地上戦の朝鮮戦争を体験した韓国市民にとっても、沖縄戦と基地問題の関係を知ることは重なると考えたからだ。さらに米軍飛行場の全面返還を勝ち取った読谷村(よみたんそん)の実践。これは未来につながる取り組みで、平和を希求する日韓市民が共有できる展望と考えた。

 東アジアの軍事的脅威が高まる情勢の下で、ツアーと12月集会を結んだ。沖縄だけでなく、全国規模で日米軍事一体化が強まっている現実として米軍岩国基地を視察。人類初の原爆被害にも接した広島での集会は、現在の核戦争への危機を改めて考える機会となり、東京では米軍横田基地の問題ともつながった。

 広島集会で、ユ・ミヒさんは「今は戦前」と表現し、「過去、現在、未来を見つめ直すツアー」と語った。まさに今回のツアーの目的と意義が伝わった場面だった。「一度基地を引き受けてしまうと永遠になくならない。戦前は旧日本軍基地、戦後米軍、また自衛隊基地や韓国軍基地になった」という発言も、日米韓戦争推進勢力の狙いを指摘するとともに、沖縄の上間芳子さんや宮古島の当真まり子さんの闘いにつながった。

 東アジアで絶対に戦争させない、戦争で市民を殺させない、これ以上の新基地建設を許さない。これは韓国でも沖縄をはじめ日本でも市民の共通の願いであり、東アジアの平和構築に連帯して取り組む課題がより鮮明になった。

 今後、ツアーと集会で確認された「平和を希求する日韓の市民による共同声明」賛同運動をはじめ、韓国の高高度迎撃ミサイルTHAAD(サード)や脱原発の闘いの現場に日本から訪れること、日韓の青年層を中心にした沖縄参加団ツアー、東アジア平和構築のための資料室づくりなど多彩な行動計画が企画されている。

(ZENKO事務局・西岡信之)

沖縄と韓国を結んだ過去、現在、未来

Q ツアーで何を感じたか

ユ・ミヒさん

 戦争と平和について考える人びと出会い、東アジアの過去、現在、未来を見た思いだ。

 沖縄、広島、靖国では、過去、帝国主義国家の残酷な仕打ちで亡くなったアジア民衆を見た。沖縄ではガマに逃げ込んで殺され、広島では何十万の人びとが死んでいった。

 そんな悲惨な歴史があったその場所で、現在、軍事化が進んでいる。日本軍が作った基地を米軍が接収し、返還後また自衛隊が使う。一度作られた基地は繰り返し軍事拠点となる。基地の近くには、老人、子どもや労働者が暮らしている。事故が起これば生活が脅かされる。基地はその地域の人びとの命だけでなく東アジア全体の平和を脅かす。戦争は遠くにあるものではなく、こんな身近なところで準備されていると強く感じた。

 現時点に立ってどんな未来を創るのかが重要だ。いま進んでいる軍拡を止めなければ、過去の悲惨な歴史が繰り返される。それを防ぐために民衆の国際連帯を強めることが必要。民衆の連帯した闘いができるかどうかが、東アジアの未来が平和なものとなるかどうかの分岐点だ。

ビョン・ヒョンジュさん

 沖縄の上間さん、当真さんと会い、密陽(ミリャン)や星州(ソンジュ)で闘っているハルモニ(おばあさん)と重なった。どこに行っても国家暴力と闘っている民衆がいる。それを見ると一人の活動家として闘いを支えたいと思うとともに、どう連帯できるか責任感も感じる。沖縄から横田基地まで巡って見た現実を、韓国に戻って伝える責任がある。ツアーを通じて、いま戦争状態なんだと感じた。

Q 今後の取り組みは

ユ・ミヒさん

 沖縄戦では1万人以上の朝鮮・韓国人が犠牲となったが、平和の礎(いしじ)には460人程度の名前しか刻まれていない。異国の地で死ななければならない理由は犠牲者本人も遺族にもわからないだろう。韓国人だけでなく、すべての人の死がそんな扱いしか受けていない。沖縄、広島と靖国を見て、歴史をどう記録するのか、誰がするのかによって大きく異なることを改めて感じた。靖国は戦争を称揚する視点。富国強兵のもとで人が死んでいくことを当たり前としていることに怒りがわいた。

 東アジア民衆の平和記念館が必要だ。一番大きな存在であり、最も平和を望んでいる民衆のための平和記念館をZENKOと一緒に作っていければと思う。

 未来は平和をめざす人びとの力をどれだけ大きくできるかにかかっている。頑張ろう。

ビョン・ヒョンジュさん

 日韓の青年が交流できる機会ができればと思う。手をつなげば、隣人を助けることができる。ともに手をつないで平和の道を歩んでいこう。

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