2018年01月19日 1510号

【「専守防衛」で先制攻撃!?/侵略軍への変貌重ねる自衛隊/インド太平洋にらみ日米軍事一体化】

 2018年度政府予算案に計上された防衛関連予算は5兆2千億円。6年連続増、史上最高額の軍事費だ。金額の膨張だけが問題なのではない。他国攻撃を想定した兵器を続々と買いそろえている。戦争法などで「専守防衛」の看板をはずした自衛隊。侵略軍の体裁を公然と整え始めた。めざすはインド太平洋構想に見合う海外派兵組織としての再編強化だ。

侵略兵器続々

 タガが外れたとはこのことだ。年末、来年度の軍事費をめぐり驚くべき報道が相次いだ。敵基地攻撃目的の長距離巡航ミサイル、新たなミサイルシステム「イージス・アショア」に続き、護衛艦「いずも」を空母に改造、F35B戦闘機導入を検討などなど。

 空母は戦闘機の洋上基地。政府は「いずも」を護衛艦と呼んでいるが姿は空母そのもの。米軍の強襲揚陸艦とほぼ同じ大きさであり、短距離・垂直発着ができるF35Bはその艦載機として開発された。強襲揚陸艦は空母の進化型と言われ、戦闘部隊の輸送など多様な上陸作戦に対応できる。米強襲揚陸艦「エセックス」はイラク戦争に出動、沖縄から海兵隊を運んだ。

 自衛隊の建前は「専守防衛」。日本が攻撃されたときに迎え撃つ「最小限度の実力」しか持たないことになっている。「いずも」建造時、政府は「憲法の制約から攻撃型空母は保有できない。戦闘機やオスプレイを搭載する計画はない」と言い逃れた。就役からわずか2年、取り繕うことさえしなくなった。

 小野寺五典防衛大臣は「いずも」改造を否定したが「あらゆる検討はしている」と準備段階にあることを隠さない。「専守防衛」の歯止めはもはやない。特に、戦争法による集団的自衛権容認、自国が攻撃されなくても戦争できる道を開いてからはこだわる理由はない。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル開発を口実にすれば、敵基地攻撃=先制攻撃まで「自衛権」だと口にできる。

米軍との「共同運用」

 相次ぐ侵略兵器購入の背後で何が起こっているのか。

 急増する軍事費の中でも米政府から購入する「対外有償軍事援助(FMS)」の割合が急拡大している(表)。米政府の言い値で米国製兵器を買うことに会計検査院からも不利益や不備が何度も指摘されているが、安倍晋三首相は「安全保障環境が厳しい中、我が国の安全に必要だ」(11月29日参院予算委)と強弁する。トランプ大統領に押し売りされたからではない。自衛隊が侵略軍のノウハウを身につけるには、米軍と同じ兵器システムを使い一体となって訓練を繰り返すことが効果的だからだ。

 例えば、米イージス艦搭載のレーダーとミサイル装置を陸上に設置するイージス・アショア。米国の「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」の一端を担う。米国防総省は13年「米国と相互運用可能な防空・ミサイル防衛能力への投資を同盟国に促進する」との文書を公表。イージス・アショアは米軍Xバンドレーダーとの連携が前提だ。その設置場所がグアム、ハワイの米軍基地を狙う朝鮮ミサイルの軌道直下に近い萩、秋田であるのは偶然ではない(資料)。

  

 18年に編成する日本版海兵隊「水陸機動団」。中軸となる陸上自衛隊西部方面普通科連隊は米太平洋海兵隊と共同訓練を重ねてきた。海兵隊が使っている水陸強襲車両を購入し共同訓練を積むが、次期車両は共同開発することになっている。

海外派兵組織へ

 自衛隊組織は米軍との共同行動を重ねる中で組織改編を行ってきた。陸上自衛隊がイラクに派兵された04年、「国内での防衛戦」から「軍事力の派遣」に見合う組織づくりが始まっている(『「日米指揮権密約」の研究』創元社)。

 06年、自衛隊は指揮権のない「統合幕僚会議」を「統合幕僚監部」に改組し、統合幕僚長を新設し指揮権を集中した。陸海空軍の統合司令体制がある米軍に合わせ、共同作戦をしやすくした。

 陸自にPKOを担う中央即応集団を組織したのが07年。今年、「陸上総隊」に改編、水陸機動団を含む陸自全部隊を指揮する「統一作戦司令部」となる。米陸軍第1軍団司令部との一体化を進めるためだ。

 15年に合意した「日米防衛協力のための指針」(第3次ガイドライン)は「平時から緊急時まで」「アジア太平洋地域をこえた地域」を日米軍事同盟の対象とし、「同盟調整メカニズム」と「共同計画策定メカニズム」の2つの機関を設置した。今、日米軍事演習は1年を通じて切れ目なく行われている。15年度、陸海空の自衛隊は統合訓練をあわせ、合計30回のべ570日以上米軍との軍事演習を行った(16年版防衛白書)。

 河野克俊統合幕僚長は14年、米国防総省での会談で「戦争法は来夏までに成立」と断言し批判を浴びた。その同じ席で自衛隊のジブチ派兵拡大に言及、米太平洋軍司令部・中央軍司令部と合わせてアフリカ軍司令部との連携強化を望んだ。ここに自衛隊がどんな姿を思い描いているか表れている。めざすものは、アジア太平洋からアフリカまで、まさに安倍が掲げる「インド・太平洋構想」に見あう海外派兵組織への変貌だ。

歯止めは憲法9条

 軍事力整備の方針となる「防衛計画の大綱(防衛大綱)」が今年見直される。安倍は「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と大幅改定を示唆している。念頭にあるのは、いつでも、どこにでも投入できる軍隊だ。

 安倍の描く「国軍」創設に立ちふさがるのが憲法9条であることは間違いない。軍拡、改憲を阻止する重要な年となる。3000万署名と対話で、侵略軍に変貌する自衛隊の実態を広く伝えよう。 
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