2018年01月19日 1510号

【みるよむ(466)2017年12月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan 宗派主義による分断を許さない市民の声】

 イラクでは、さまざまな宗教や宗派が存在し、宗派の違いを口実にした対立が引き起こされている。サナテレビは、この宗派主義の問題をどのように見ているのかを市民に聞いた。

 2003年の米軍占領以来、イスラム教のシーア派やスンニ派など宗派による分断が持ち込まれ、宗派主義集団が権力を握り、私兵を育成して市民を攻撃し、支配するようになった。

 現在、形の上では選挙を行っているが、実際には宗派や民族の利権しか考えない宗派主義政党、民族主義政党が政治を占有している。ある市民は「みなさんは選挙公約をもとに候補者を選んでいますか?」と問いかける。その答えは「公約の内容を知っている人なんかいない」というものだ。どの候補に投票しても、市民の生活は良くならず、安全な社会になったという実感も全くないのだから、そうした気持ちになるのは当然かもしれない。

 最近ではクルド地方の独立を求める住民投票をめぐって、宗派主義勢力がクルド民族に対する憎悪をあおり、同じ市民同士を対立させることで権力を強めようとしている。

 もう一人の市民は「宗派主義は終わったと思います」と主張する。その理由は「宗派主義というのはウソだから」と言う。この男性は、自分の妻とは宗派が違っているが、特に何の問題もない。これが普通の市民の生活実感だ。もはや「政治家は人びとをだませなくなっている」と言う。

 メディア関係者は、宗派主義は米軍のイラク侵攻以後に台頭してきたと指摘する。人びとを分断支配するために宗派主義を広げたのだ。しかし、そんな民衆支配の手段も効力をなくしてきた。この人も「宗派主義は消滅した。人間として扱われているならば、宗派主義の問題は存在しない」と主張する。

 アバディ政権はイスラム教シーア派の宗派主義勢力だ。宗派対立や民族対立を利用しながら支配を進めている。サナテレビは、このインタビューで市民の中に宗派主義はないという実態を示し、民衆分断に反対しようと訴えている。

 日本でも、安倍政権やマスコミが在日外国人、社会的少数者への憎悪をあおって分断を強めようとしている。グローバル資本の支配のやり方は共通だ。それを打開していく展望を感じさせる映像である。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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