2018年02月02日 1512号

【Q&A 3000万署名をひろげるために/3月自民案提示か 加速する9条改憲/「ひどいねアベ政治」が合言葉】

 第196通常国会が始まった。安倍政権は、6月20日会期末へ、弱者切り捨て軍拡予算とともに、労働法制大改悪、「憲法改正」へ突き進むつもりだ。国政選挙連勝の安倍だが、政策が支持されているわけではない。街頭で、地域で、「ひどいねアベ政治」と語りかけよう。9条改憲NO!憲法を生かす3000万署名をいっそう広げるためにも、こんな問答はいかがか。

Q 改憲案には与党の中から異論もあり、簡単には進まないのでは。

A 「異論」は抑え込んだとみて間違いないでしょう。自民党の憲法改正推進本部は昨年12月、改憲4項目の「論点とりまとめ」を決めました。緊急事態条項や参院「合区」、教育無償化もありますが、本題は9条です。

 自民党は2012年の改憲草案で9条修正案を決めたものの、安倍晋三総裁が日本会議らの入れ知恵で別の案(安倍改憲案)を言い出しました。そのため党内をまとめ直すことが必要になったのでした。

 草案は、9条2項(戦力不保持、交戦権否定)を自衛権発動に書き換え、9条の2として国防軍・国際的平和活動(=海外派兵)・審判所(=軍法会議)を、9条の3では「国民と協力して」(=徴兵制)を書き加えるもの。防衛大臣経験者の石破茂前幹事長は、草案支持の立場から、安倍改憲案は「中途半端」だと批判しました。安倍改憲案は9条1項(戦争放棄)、2項は変えず、自衛隊を認める3項を加えるもの。反対世論を分断するのが狙いです。

 結局、「論点とりまとめ」で草案は消え、安倍改憲案で意思統一したのです。

 特別顧問の高村正彦副総裁は「党大会(3月25日)の頃に形ができればいい」とめどを示しました。「けじめ」をつける儀式でしょう。

 いよいよ本気モード。公明党、日本維新の会など改憲政党との「調整」は残りますが、少なくとも自民党は安倍改憲案で突っ走る体制をつくったのです。

Q 自衛隊を加えるだけなら、現状と変わらないので、反対しなくてもいいのでは。

A 安倍の期待通りの反応ですね。12月のNHK世論調査では、自衛隊明記に「賛成」36%、「反対」20%、どちらとも言えない「35%」でした。1月の共同通信調査では、安倍政権での改憲に「賛成」33%、「反対」54・8%でした。聞き方次第で数字が変動するのは、「自衛隊は憲法違反、絶対ダメ」が多数にはなっていないからでしょう。

 自衛隊を認める最大の理由は「災害救助に役立つ」からではないでしょうか。

 災害現場はまさに戦場。破壊されたがれきの撤去や遺体搬送、救援物資輸送、仮設風呂など自衛隊の「活躍姿」がニュースになります。しかし、どれも自衛隊にしかできない活動ではありません。災害現場で人命救助をしているのはレスキュー隊です。救助方法を日々訓練しているからです。自衛隊の日常の訓練は破壊と人殺しです。軍隊にとっては災害時の活動も訓練になります。同じ人員でも救助用機材を揃える組織であれば、もっと多くの人が助かるのです。

 安倍改憲案が明記する自衛隊は、災害救助を任務とする組織ではありません。あくまで破壊と人殺しのための戦闘集団なのです。

Q 「中国、朝鮮は何するかわからないから自衛隊は必要」と言われました。

A 「戦争賛成」の人を説得するのは骨が折れます。中国は軍事力を拡大し、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は核・ミサイルで武装するつもりです。だから日本も戦争の準備をするのでしょうか。

 中国は自衛隊のミサイルシステムを警戒し、朝鮮は在日米軍や自衛隊に脅威を感じています。軍事力の拡大は互いに恐怖と不安を与えるものでしかなく、今行われている南北対話のように平和外交だけが信頼づくりを可能にします。

 まして18年度政府予算案は史上最高5兆2千億円の軍事費を計上。揃える兵器は「防衛目的」ではありません。本紙1510号で書いたように、自衛隊の組織も兵器も侵略軍へ変貌を続けています。海外派兵目的の戦争法は成立させたものの憲法違反との声は消えません。そんな違憲法律を根拠に軍事行動を起こすのは安倍政権でも不安です。だから憲法に自衛隊を明記して、9条そのものを骨抜きにしたいのです。安倍改憲はじっちゃんを超えたい晋三坊ちゃんの願望≠ナはありません。グローバル資本が覇権争奪戦の時代を勝ち抜くために必要だと位置付けているのです。

 経済的進出をするためには投資国の権力者と手を結びます。独裁的な政権であればあるほど、軍事支援は効果をあげます。「海賊対処」名目でアフリカ・ジブチに駐留する自衛隊が解雇に抗議するジブチ人労働者を装甲車と銃で脅しました。自衛隊が必要だと言う人に問いかけてみましょう。「他国の市民に銃を向けることを自衛隊員にさせるのですか。日本の若者を戦場に送っていいのですか」

Q 自民党支持が安倍改憲賛成につながるとは思えません。安倍嫌いの人は結構います。

A 安倍は嫌われています。しかし、自民党が再度政権についた12年の衆院選挙、13年参院、14年衆院、16年参院、17年衆院と安倍自民5連勝は認めざるをえません。

 選挙結果には、小選挙区制度や野党共闘の妨害などが影響しています。ですが、世論調査で重視する政策のトップに選ばれるのはいつも「景気対策」や「福祉」。「憲法」は上位にはなっていません。安倍は、19年の参院選と同時に改憲国民投票をすれば、自民支持とともに「改憲賛成票」を取り込めると計算しているかもしれません。

 「生活はよくなっていない」とみな実感しています。でも「安倍政権のせい」とはならず、「株価上昇」や民主党政権時代のマイナスイメージの方が増幅されています。欧米で反緊縮政策を掲げた候補者が若者中心に支持を広げていることに学ぶ必要があります。社会保障、福祉、医療、教育などに予算を使えば、環境破壊、資源浪費のリニア新幹線以上の経済効果が発揮されるのは間違いありません。

 3000万署名の第2項目は「憲法を生かす政治の実現」です。憲法は第25条で、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があることを明記し、国に社会福祉など増進する努力を課しています。ところが18予算案でも社会保障費の自然増分を1300億円削って、生活の水準を低下させます。第27条(労働の権利・義務)に基づく労働基準法を「働き方改革」と称して改悪。残業代も払わず残業制限もなくし労働者を奴隷のように使い放題にできるようもくろんでいます。

 国会ではモリカケ問題をはじめ安倍の政治私物化や弱者切り捨て政策の追及が始まります。署名は、安倍政権のひどい政策を全面的に訴えるいい機会です。「ひどいねアベ政治」と語りかけましょう。



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