2018年02月02日 1512号

【みるよむ(469) 2018年1月20日配信 イラク平和テレビ局in Japan 医薬品の値上げを許さない―イラク市民の声】

 イラクのアバディ政権が進める緊縮政策は、市民生活のあらゆる面にのしかかっている。病院では医薬品が値上がりし、生活を直撃している。2017年11月、サナテレビは病院の薬剤師に直接取材してこの問題に迫った。

 取材に訪れたのは、保健省に所属するかなり大きな病院である。それでも、最初に登場する薬剤師は「患者の治療に必要な薬剤にはたくさんの種類があるが、一種類しか支給されないこともある」と語る。さらに、薬剤の輸送、品質管理、予算配分にも問題がある。患者の命を守るべき病院で、必要な医薬品が十分届いていない。市民の健康と命が軽んじられている。

 これ以外にも問題がたくさんある。2003年のイラク戦争と占領、IS(「イスラム国」)との戦闘など、イラクは長年にわたって戦争状態が続き、負傷した兵士の治療のために軍病院に転換された病院も多い。薬剤師も、入院してくる兵士を精神的に支援する手助けの仕事もしている。本来業務以外の負担が重なっている。

高価格の薬品で金儲け

 何と言っても大きな問題は、医薬品が値上がりしていることである。ある薬剤師は「理由の一つは製薬会社がイラクに広範囲に入ってきたことだ」と説明する。この男性は「企業は金儲けが目的」とずばり指摘する。製薬会社の高い価格の医薬品が患者に押しつけられているのだ。

 その金儲けぶりは「注射1回に100ドル(約1万1千円)かける」というものだ。イラクの正規雇用労働者の賃金は月500ドル(約5万5千円)程度。庶民は、とてもこんな高額な医薬品を手に入れることはできない。

 サナテレビは、何人もの薬剤師に直接話を聞くことでこうしたイラクの医療の危機的状態を浮きぼりにしている。

 アバディ政権は、石油価格の下落を口実に緊縮政策で医療などの生活関連部門を切り捨て、市民が医薬品もまともに買えないような状態に追い込んでいる。民間企業が医薬品などで莫大な利益を上げている点も日本とそっくりだ。

 グローバル資本の利益のための市民生活破壊を許さない声をイラク市民とともにに上げていきたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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