2018年02月02日 1512号

【ミリタリー・ウォッチング 戦争準備で日米とも事故激増 唯一の解決策は軍事活動停止】

 前回(本紙1509号)、米軍や自衛隊の事故激増の背景にある「新たな任務」の増加にふれた。今回は、「新たな任務」の増加が日米の軍事活動にどのような影響を及ぼしているのか、事故激増の根本原因を探る。

 この間の事故の米軍調査報告では、構造的欠陥機で知られるオスプレイの事故も含め、「人為ミス」「初歩的ミス」が「直接の原因」と強調されている。

 横須賀基地所属の米ミサイル駆逐艦「フィッツジェラルド」(6月に南伊豆沖で民間タンカーと衝突、乗組員7人死亡)と同ミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン」(8月にシンガポール沖で民間タンカーと衝突、乗組員10人死亡)に関する米軍の「事故調査報告書」は、「初歩的ミスの積み重ねが重大事故を招いた」とする。「当直の乗組員はレーダーを扱う基本的な知識を持たず、船の位置を正確に把握できなかった」「監視員は操舵コントロールシステムの初歩的レベルの知識もなく、教育も受けていなかった」等、驚くほどお粗末な組織運営の実態が記されている。

37%が必要訓練もなし

 また、米政府監査院の幹部は「任務が増える一方で乗組員の訓練不足が横行している。日本を拠点にする米艦の乗組員の37%が今年6月の時点で必要な訓練を怠っている」(17年9月、米下院公聴会)と証言した。さらに、「フィッツジェラルド」の「事故調査報告書」は「衝突事故以前、乗組員に著しい疲労状態に陥らせるような勤務スケジュールを実施…。艦長以下の指導スタッフは、この疲労状態がもたらす危険性を適切に評価せず、乗組員に適切な休息を保障する改善策をとらなかった」と指摘する。実際、同艦は事故前110日間の長期の作戦行動のあと横須賀に帰港。わずか9日間滞在しただけで再び出航し、翌日事故を起こしている。



 実情は、海上自衛隊でも変わらない。「米艦防護」のため横須賀を出航したヘリ空母「いずも」も、「日米共同訓練」「多国間洋上訓練」などで100日を超える長期航行の「過酷な任務」に就いている。

 同様のことが、在沖縄海兵隊の航空機事故にも言える。中東での15年間に及ぶ「戦争疲れ」に加え、朝鮮半島情勢の緊迫化に伴う訓練激増が機材や兵員に従来にないストレスを与え、さらに軍事費削減による整備不足があるとの指摘がある。

緊張も基地もなくせ

 04年の沖縄国際大ヘリ墜落事故は「イラク戦争への派遣に備え、ヘリの整備士が1日17時間の勤務を3日間続け、疲労がたまり、後部ローターの固定ピンを付け忘れたのが原因」(事故調査報告書)とされる。予算削減が深刻な状況に拍車をかける。「予算削減で作業員や部品が不足し、整備が間に合わず、海兵隊の保有する全航空機の4割程度しか飛行できない。飛行可能な機体に負担が集中し劣化が進む他、訓練時間が短く、『人的、機械的な誤りによる事故のリスクが高まる』懸念」(「ヘリテージ財団」17年10月報告書)、「軍事費削減によって海兵隊が特にヘリ不足。訓練にも悪影響」(米太平洋海兵隊司令部戦略政策部長)という実態だ。

 人を殺す以外に用途のない軍事費の削減は当然だが、軍事活動は縮小されていない。危険な戦争準備と「不合理」=でたらめな軍事活動の拡大が事故を激増させていることは明らかだ。緊張をなくし、基地をなくし、軍事活動そのものを止めることが唯一の解決策である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS