2018年02月09日 1513号

【南北会談実現は対話の成果/安倍は「圧力」を放棄せよ/憲法体現する政策へ転換を】

「圧力」一辺倒で悪化

 1月9日、2年ぶりに開かれた韓国と朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の南北高官会談は、対話のみが平和を築くことを世界に示した。

 2006年10月以降、国連安保理の対朝鮮制裁決議は10本に上る。以降11年間、米政府は日韓中露各国政府や国連安保理などで「制裁の履行、制裁の強化」を協議することはあっても、米朝の表立った対話はなかった。

 安倍政権も「対話と圧力」と言いながら圧力をかけることしかしてこなかった。

 国連での経済制裁と合わせて日米韓政府は軍事的威嚇を繰り返し、朝鮮は核・ミサイル開発を加速させてきた。

 米国は太平洋・インド洋に展開する原子力空母を度々北上させ、戦略爆撃機をグアムに集結。昨年9月3日、朝鮮が6度目の核実験を強行すると、米国は原子力空母3隻を朝鮮半島に集結させ、政権転覆も辞さない米韓・日米合同軍事演習を展開した。

 日米両政府は、朝鮮との直接対話のないまま、朝鮮に核・ミサイル開発の口実と技術向上の時間を与えた。「圧力のための圧力」は何ら意味がないばかりか、かえって事態を悪化させた。

軍事演習を延期

 緊張緩和への糸口を作ったのは民衆の「キャンドル革命」によって成立した韓国・文在寅(ムンジェイン)政権だ。

 昨年9月、就任後初めて臨んだ国連総会で文在寅大統領は「核・ミサイル問題の平和的解決。平昌(ピョンチャン)オリンピックへの朝鮮選手団参加」を呼びかけた。11月には、オリンピック開催期間中一切の敵対行為を中断する「オリンピック休戦決議」が総会で採択された。決議そのものは恒例のものだが、韓国主導で作成された決議には、「平昌五輪が朝鮮半島と北東アジアの平和、開発、寛容と理解の雰囲気を作る上で意味ある機会になるという期待を表明する」との内容が含まれた。世界的フィギュアスケート選手だった金妍兒(キムヨナ)平昌オリンピック広報大使も、朝鮮選手団の参加を呼びかけた。

 12月に入って文大統領は、オリンピック期間中と重なる米韓合同軍事演習の延期を米国に提案。1月4日、トランプとの電話会談で「朝鮮が核・ミサイル挑発をオリンピック開幕までやめるなら延期する」と合意した。これは昨年6月、「米韓合同軍事演習が中止されるなら、核・ミサイル開発の凍結・廃棄について話し合う意志がある」(駐インド朝鮮大使)と表明した朝鮮に呼応するものだ。

準備されていた対話解決

 文・トランプ電話会談の翌日、朝鮮は南北高官会談開催という韓国側提案を受諾。会談での合意事項は、平昌オリンピック・パラリンピックへの朝鮮選手団参加・協力だけにとどまらない。朝鮮半島の軍事的緊張状態解消のための軍事当局者会談実施、多様な分野での南北間交流、南北の自主的統一をめざした2000年の「南北宣言」の尊重とあらゆる問題の対話・交渉を通じた解決に合意した。

 「キャンドル革命」が示した韓国民衆の平和への意思の下、文大統領は終始、対話と融和路線をとってきた。17年7月には「国政運営5か年計画」を発表し、「2020年の核放棄合意」を目標に、朝鮮半島の非核化と平和体制構築に向けたロードマップ策定を表明した。

 中露も同月「朝鮮半島問題に関する中露共同声明」を発表。そこには「北朝鮮の核・ミサイル試験の中断および韓米による大規模合同訓練の中断→交渉開始→武力不使用・不侵略・平和共存を含めた総体的原則の確定→核問題を含むすべての問題の一括妥結」といったロードマップが示されていた。

平和主義こそ信頼築く

 「対話による解決」路線が朝鮮半島非核化を見据えた解決の糸口をつかんだ。南北対話の再開は、中露のみならず、トランプも支持し、国連事務総長をはじめ世界中が歓迎した。何より、韓国・朝鮮民衆の意思にかなう。唯一、安倍のみが対話路線を完全否定している。

 憲法前文は「平和を愛する諸国民の公正と信義」に依拠して日本国民の安全と生存を保持するとした。そして、その信頼を根拠に、第9条で「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とした。国際紛争の平和的解決の基礎は対話による信頼醸成以外にない。南北会談は、日本国憲法が実現しようとする国際社会の在り方に合致する。

 9条改憲で「いつでもどこででも武力行使」を目指す安倍にとって、憲法に沿った核問題の解決は都合が悪い。閣僚がことごとく南北会談を否定するのもこのためだ。

 南北会談を支持し、オリンピック後の米韓日合同演習再開を許さず、米朝・日朝の直接対話を実現することが、安倍改憲を阻止する力となる。

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