2018年02月09日 1513号

【「働き方改革」ならぬ「働かせ方大改悪」 過労死強要し差別を合法化 ドレイ化推進法許すな】

 1月22日、安倍首相は施政方針演説で「働き方改革」断行を宣言した。「誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革」「同一労働同一賃金いよいよ実現の時」「不合理な待遇差を禁止し『非正規』という言葉をこの国から一掃」―まさに息を吐くように平気でうそを言う。安倍「働き方改革」とは、過労死をも強要する「働かせ方大改悪」、奴隷化推進と呼ぶべきものだ。

 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」はまだ閣議決定されていないが、政府は2月下旬にも法案提出、3月下旬の法案審議開始を狙う。

 法案要綱に基づくと「働き方改革一括法案」の内容は次のようになる。

過労死水準を合法化

◆残業時間「規制」

 柱は、(1)残業時間は「月45時間、年間360時間以下」を原則とする(2)繁忙期であっても「月100時間未満」「2〜6か月の月平均がいずれも80時間以下」とする(3)月45時間を超えるのは年6回まで(4)繁忙期を含めても「年720時間」を上回らないなど。このうち、(1)、(3)、(4)は休日労働が含まれていない。そのため、休日労働を行えば、毎月80時間、年960時間の残業が合法化される。まさに過労死水準の合法化だ。これに伴い、これまでの過労死認定の司法判断水準も後退する。

 研究開発業務、建設業、運転業務、医師については、この規制すら適用されない。

◆フレックスタイム制

 労働者が始業・終業時刻を自身で決定できるフレックスタイム制は、超えてはならない合計労働時間の範囲を定める清算期間が現行では1か月。これを3か月に延長する。企業は、繁忙期の長時間労働と残業代なしの労働時間を大はばに増やすことができる。

◆企画業務型裁量労働制

 裁量労働制はみなし労働時間制であり、これが適用されると、実際の労働時間とは関係なく労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされて一定額が支払われる。企業にとっては定額働かせ放題の制度である。

 現在は、研究開発業務や弁護士・税理士・設計士などに限定されている。だが、新たに「事業運営事項の実施把握・評価業務」「法人提案型営業」へ拡大が狙われている。「運営事項の実施把握・評価」のような抽象的な規定では、管理職だけでなく、管理業務に関係する極めて広範な労働者が対象とされる恐れがある。「法人提案型営業」では、顧客が法人で何らかの提案等があれば、ほぼすべての営業職が対象となりかねない。

残業代ゼロ、首切り自由へ

◆特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)

 これが残業代ゼロ法≠セ。 1日8時間、週40時間、休憩時間付与、時間外労働への割増賃金の規制をすべて適用除外とする。1日24時間14日連続労働も可能な制度になる。年収要件は当初1000万円程度以上とされるが、これを400万円以上に拡大したいのが経団連の本音だ。塩崎前厚生労働大臣は経団連を前に「小さく生んで大きく育てる」と約束している。

 米国では、同じ制度がすでに年収200万円の労働者にも適用されている。

◆雇用対策法の「改正」


 法の目的に「労働生産性の向上」を、国の施策≠ノ「多様な就業形態の普及(非雇用・個人請負型労働)」を盛り込む。厚労省「働き方の未来2035」報告書が描く、「非雇用」として労働基準法がまったく適用されず規制も権利も解体される労働契約自由社会≠ヨの布石だ。

差別待遇も温存

◆労働者派遣法の「改正」

 派遣労働者と、派遣先の通常労働者との不合理な労働条件の相違の禁止。ただし、派遣元企業で待遇に関する労使協定を結んでおけばそうした禁止条項は適用されないという逃げ道を用意した。

◆短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)の「改正」

 名称を、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に変更。文言上は、パートタイム労働者や有期雇用労働者と正社員の間の「不合理な待遇の禁止条項」を設けた。しかし、法案要綱に「同一労働同一賃金」は記されていない。

 また、非正規労働者(派遣・パートタイム・有期雇用労働者)を正社員と均等待遇にしなければならない条件は「非正規労働者の職務の内容や配置が、その職場の正社員と同様に変更されること」である。つまり、勤務地変更を伴う正社員と勤務地が特定される非正規労働者では同じ仕事をしても差別待遇が許される差別合法化法≠ネのだ。

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 「働き方改革推進一括法案」とは、徹底して反労働者的な「働かせ方大改悪」を進める奴隷化推進法案である。全労働者・市民の力で廃案にしなければならない。



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