2018年02月16日 1514号

【デマと争点隠しの名護市長選 敗北したが民意は生きている 市議選、知事選で挽回だ】

出口調査は「移設」反対

 米海兵隊普天間基地の名護市辺野古への「移設」問題を最大の争点とする名護市長選が2月4日投開票された。「海にも陸にも基地は作らせない」と新基地建設阻止の先頭に立ってきた現職・稲嶺進市長が落選という残念な結果に終わった。新市長には、自民、公明、維新が推薦する前市議の渡具知(とぐち)武豊候補が初当選した。稲嶺さんは1万6931票を獲得したが、3458票の差で敗れた。投票総数は3万7524人、投票率は前回比0・21ポイント増の76・92%だった。

 辺野古新基地に反対する稲嶺市長は落選したが、各メディアの出口調査では約6割が「辺野古移設に反対」と答えている。渡具知候補は、辺野古問題には一切ふれず「国と県が係争中のため裁判の行方を注視する」としか言っていない。名護市民の民意は、辺野古新基地を認めていない。

最大争点を隠す

 安倍政権は戦争国家づくりと日米同盟強化を通じた派兵拡大への重要な柱として、辺野古新基地建設を狙ってきた。そこに立ちはだかっているのが県民とともに歩む「オール沖縄」の翁長雄志(おながたけし)知事と稲嶺市長だ。戦争・改憲戦略を阻む「オール沖縄」をつぶすために、何が何でも名護市長選に勝とうと3つの策略を展開した。第一に争点隠し、争点外し。第二に稲嶺市政へのデマ攻撃。そして第三に権力の総力あげた期日前投票だ。

 まず、辺野古新基地建設が最大の争点であるにもかかわらず徹底して基地問題にふれない作戦に出た。選挙応援に関する自民党の内部文書で「NGワード…辺野古移設(辺野古の『へ』の字も言わない)」と辺野古禁句の指示が出されていた。基地問題を言わずに「町づくり」「閉塞感」を連呼するよう応援弁士に求めた。三原順子参院議員は「県内で他の市は潤っているのに名護市だけが経済低迷の閉塞感」とぶち上げた。2度も名護入りした小泉進次郎衆院議員は、基地問題に一切触れず「ソーキそばに、シークヮサー、泡盛にオリオンビール、対立に終止符を打って協調と融和の名護市」と新基地やヘリ墜落の問題などないかのようにふれまわった。

 さらにメディアを活用して対立軸をゆがめた。NHKをはじめ各メディアは、市長選挙を「基地反対か、経済振興か、が対立軸」と報道した。しかし、翁長知事が繰り返し言うように「基地が沖縄の経済発展の最大阻害要因」であり、基地による経済発展などあり得ないにもかかわらず、有権者にはその2つが対立しているかのように仕掛けた。

異常な期日前投票増

 稲嶺市政へのデマ攻撃では、ゴミ問題で県下11市で一番住みにくい名護市≠ニこき下ろす。市の借金54億円増=i実は8年で歳入総額508億円増、基金も増)給食センター老朽化放置=i実は計画進行)北部基幹病院の整備棚上げ=i実は促進)―すべてウソ、デマを百も承知でチラシや横断幕まで使って拡散。稲嶺市政が基地交付金に頼らず実現した医療費中学生まで無料、保育所待機児童ゼロ、国民健康保険料県下で最低等の事実を、基地しか言わない≠ニゆがめた。

 期日前投票は、有権者の約44%にあたる過去最高の2万1660人(総投票数の約58%)。基地問題を巡る企業による動員など期日前投票が多い名護市だが、2014年前回選挙の1万5835人を6千人近くも上回る異常な事態となった。日本の選挙史上、投票日前日にほぼ半数近い有権者が投票済みなどまずない。

 期日前投票の徹底には、企業ぐるみや公明党―創価学会の動き以外にも理由があった。松本文明内閣府副大臣が発した「それで何人死んだんだ」のような暴言、米軍ヘリの事故など、選挙前にいつ起きるかもわからない事態への危惧が政権内部に付きまとっていた。暴言や事故のないうちにできる限り早く選挙に行かせろとの指示があったともいわれる。これほどの期日前投票は、名護市の自民党・公明党の力だけではできない。強力な権力機構が企業や創価学会を徹底的に動かしたのだ。

直ちにゲート前座り込み

 開票結果を受け、翁長知事インタビューのあと、支援者から「がんばろう」「ヨシッ」の声が上がり、拍手が鳴りやまなかった。翌2月5日、知事は「名護市長選挙は敗れたが、民意は生きている。辺野古新基地建設阻止の民意は変わらない」と闘いの決意をきっぱりと表明した。

 同じ選挙翌日、辺野古キャンプ・シュワブゲート前には、早朝から市民約100人が駆けつけ、気合の入った座り込みが始まる。そこには、名護市長選と同時実施の市議補欠選挙に立候補した安次富(あしとみ)浩さん(ヘリ基地反対協議会共同代表)の姿も。結果は及ばなかったが、いつものようにゲート前に顔を出し、「選挙は負けたが、また現場で闘うだけ」と力強い言葉で参加者にエールを送った。

 名護市長選は敗れたが、落ち込んでいる時間はない。市長権限で許認可を阻んでいた部分について急ピッチで動き出すことも考えられる。今まで以上にゲート前に結集し、ダンプを止め、海上監視行動を強めることが求められる。

 また9月名護市議選で野党議席数を過半数にし、最大のヤマ場、11月知事選で翁長知事の再選を勝ち取らなければならない。敵に辺野古断念やむなしと諦めさせるまで闘い続ける以外にない。 (N)



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