2018年02月16日 1514号

【3000万署名で訴える―脅威は日米中ロの核軍拡/トランプ「使える核」戦略へ/「核抑止力」持ち上げる安倍政権】

 安倍9条改憲NO!3000万署名活動の場で、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「核ミサイル脅威」が話題になる。「日本が狙われる」と想定するためだろうが、世界的「核の脅威」は一層深刻だ。核保有国は互いに核兵器を突きつけあっているからだ。「核による威嚇はやめろ」とすべての核保有国に訴える時だ。9条を死文化する安倍改憲を決してさせてはならない―そんな思いを署名に集中しよう。

核使用へ踏み込む

 トランプ米大統領が2月2日公表した「核戦略見直し」(NPR2018)は、オバマ大統領時代のNPR2010を大修正し、180度の方向転換を示した。配備をやめた核巡航ミサイルを再開発し、通常兵器にも核報復を行うと言う。「核廃絶の道」ではなく、「より使いやすい核」戦略をめざしたのだ。

 核爆弾の破壊力はメガトン(TNT火薬換算重量:1メガトン=1000キロトン)単位の強大なもの。潜水艦から発射するSLBM「トライデントU」でも100キロトン〜475キロトン(広島原爆は15キロトン)ある。広範囲にわたる無差別破壊・殺戮のため、使うには抵抗感が大きい核保有国でも、小型化すれば軍事目標を限定的に破壊できるとして、数キロトン程度の核弾頭をめざすともいわれている。小型化により、ステレス戦闘機F35機体内部への収納や、艦上発射トマホークへの搭載など運搬手段を豊富化し、あらゆる場面で核攻撃ができるようになる。

 核兵器が非人道兵器であるのは、無差別大量殺戮であるとともに、放射線被害を戦闘後も長く引き起こすからだ。「小型化すれば使いやすい」とは、核被害の実態をわかっていない証拠だ。オバマ時代には、核兵器による「米国と同盟国の死活的な極限状況のとき」以外使わないとしてきた。だが、トランプは、非核兵器による国民やインフラに対する攻撃も「死活的な極限状況」とし、核による反撃を明言した。核使用のハードルを一層低くしたのだ。


ロシア、中国の核拡大

 新たな核開発を正当化するためにNPRは他の核大国を引き合いに出している。通常兵器では米軍に劣るロシアは、核戦力を高めることで対抗しようとしている。昨年11月進水した最新鋭原潜「ウラジーミル大公」は射程9300`b、数十メガトン級の核SLBMが最大20基搭載できる。米原潜「オハイオ」に並び、搭載核の規模では上回る。プーチン大統領は同型原潜をさらに7隻建造する方針だと言う。また核兵器搭載可能な無人潜水艦(海中ドローン)を開発中だと米軍は警戒している。

 さらに、ロシアが核搭載可能な射程400`bのミサイルシステム「イスカンデル」や巡航ミサイル「カリブル」で米軍より優位にあるとして、NPRは核巡航ミサイルの開発が必要とした。

 中国は、米ロに核弾頭数では圧倒的に劣るものの、運搬手段―爆撃機、潜水艦、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上に傾注している。SLBM「巨浪2号」は、射程距離を4倍近く伸ばし、8000`bに達した。核多弾頭(3〜4個)を搭載でき、単弾頭なら1メガトン。米本土への攻撃は無理でもグアム島の米軍基地やモスクワには、中国沿岸から届く。

憲法を生かすとき

 かりに米中開戦となれば、中国軍は米本土ではなく「在日米軍を攻撃する」と予測されている。「米本土に到達するICBMは2022年には100基に達する」との分析もある。朝鮮の核ミサイルだけが脅威なのではない。「使いやすい核」になればなるほど、「誤って」使われる可能性も高まるのだ。

 どれほど「限定的」と言おうとも、核戦争は人類を滅亡させる。「使える核」をめざすトランプの核戦略は、極めて危険な考えだ。にもかかわらず日本政府、河野太郎外相は「高く評価する。日米同盟の抑止力を強化していく」と応えた。核武装米軍と自衛隊は一体化し、核戦争も辞さず。これが安倍政権の姿勢だ。実際、導入を決めたイージス・アショアは米核ミサイルシステムに組み込まれ、ロシア、中国の脅威となっているのだ。

 安倍は、2016年オバマ政権が「核先制不使用」宣言を発しようとした時、「抑止力が低下する」と反対した。巡航ミサイルへの核搭載を放棄した時も同じ態度だった。

 「核保有国と非保有国の橋渡しをする」と核兵器禁止条約に参加しなかった安倍政権。ところがどうだ。核保有国米国と一体となって、核で威嚇する側に立っているではないか。「核拡散防止条約の仕組みを維持する」とも言った。だが、核保有国間の核軍縮交渉は進まず、その努力を促すこともない。むしろ「今はその時ではない」(外務省幹部)と核軍拡を煽る役に徹している。

 「核抑止力」論は果てしない軍拡を招く。「武力による威嚇又は武力の行使」を永久に放棄する憲法9条1項、「戦力を保持しない」同2項の規定こそ、今の危険な時代に生かすべき時だ。独自核武装に行きつく9条改憲やめろ―そう思いませんか。
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