2018年02月16日 1514号

【不当な採用拒否・排除撤回へ L.I.A.争議に支援を 2015年派遣法使う日本初の裁判】

 会社の不当な採用拒否・排除撤回を求めて闘う非正規労働者5人の裁判が始まった。当初から支援に取り組むなかまユニオンの訴えと原告の冒頭意見陳述要旨を紹介する。

L.I.A.裁判がスタート

 1月16日、床材やカーペット、カーテンなど建築関連材を製造販売する東リ株式会社(兵庫県伊丹市)に対し、2015年改正労働者派遣法に基づき従業員としての地位があることの確認を求める訴訟の第1回期日が、神戸地裁で開かれた。15年改正派遣法を使った裁判としては、民間部門で日本初の裁判である。

 訴えているのは、同社の社内請負会社として製造工程を担ってきた有限会社L.I.A.(ライフ・イズ・アート)で働く労働者5名だ。5名はL.I.A.労働組合組合員。組合員は「化成品工程」や「巾木(はばき)工程」で、18年間から短い人で4年間働いてきた。化成品工程は夏場の温度が40度近くにもなり、材料であるドラム缶(最大重量250s)を移動させる作業も道具を使わず人の手で転がして倒し中身をタンク等に投入するという重労働で、食事の時間も、まともに休憩を取ることもできない職場だった。巾木工程は、年中3交替勤務で、東リ社員が嫌がる職場だった。そんな仕事を東リ社員の3分の2から半分程度の低賃金で、十分な昇給や賞与(一時金)も無い状態で働かされてきた。

 当時は製造業への労働者派遣は禁止されており、違法派遣だった。また、最長3年の派遣受け入れ期間も違法に超えていた。組合員に対しては、東リが立てた生産計画に従って東リ社員が日常的に指揮命令を行っており、実態は労働者派遣であったが、派遣法違反を免れるために請負契約を偽装していた。

直接雇用みなし制度で

 15年10月施行の改正労働者派遣法は、そのような派遣法違反を逃れる目的で派遣契約を偽装した派遣先企業については、派遣労働者に対して「直接雇用の申し込み」を行ったとみなす制度を創設した。労働者が承諾の通知を発すれば、派遣先企業との直接雇用が成立するという制度だ。L.I.A.で働く労働者もこれを行使し、17年3月に承諾の通知を発した。

 ところが同年3月末でL.I.A.が東リから撤退。同社社員全員を新たな請負会社シグマテックが引き続ぐことを約束していたにもかかわらず、直前に労働組合を脱退した社員のみがシグマテックに採用され、労働組合員だけ採用拒否され東リの職場から排除されることになったのである。

 5名は非正規労働者の権利を守る闘いのトップランナーとして、前人未到の裁判で必ず勝利し東リに戻る決意だ。応援よろしくお願いします。

(なかまユニオン執行委員長・井手窪啓一)

原告 L.I.A.労組執行委員長藤澤泰弘さん冒頭意見陳述(要旨)

 私は37歳でL.I.A.に入社して以来、東リ伊丹工場で18年以上も偽装請負状態で働き続けましたが、昨年3月末日をもって職場を放り出され、年齢(55歳)のこともあり仕事が見つかりません。

 入社時は巾木工程に従事し、3班で3交代勤務・1班4名体制で、各班に東リの正社員が2名、L.I.A.の従業員が2名で現場に混在し、混在がなくなった以降も、東リ製造課の正社員スタッフから随時業務の指示などをされていました。私はこのような働かされ方が、労働者派遣法・職業安定法違反であることを全く知らず、一生懸命働くのみでした。この間、給料はほとんど上がらず、東リ正社員と比べて、労働条件や賃金条件の格差はひどいものでした。

 昨年、原告らは兵庫労働局に東リに対する偽装請負の申告をし、直接雇用申し込みみなし制度を利用して、東リに対して直接雇用の承諾通知を送っていましたが、昨年3月末職場から追い出され、1年がたとうとしています。

 なぜ職場から追放され、仕事を失わなければならないのですか。仕事を奪われるようなことは何もしていません。当然の権利を勇気を出して申し入れただけです。これは、立場の弱い非正規労働者を愚弄する行為です。東リは長年にわたり、違法派遣・偽装請負を行い、そのあげくに私たちをモノのように放り出したことを謝罪して、職場に戻してほしいです。

 この闘いに勝利することで、正規労働者と非正規労働者の格差是正に少しでも貢献でき、非正規労働者の一筋の希望の光になれればと思っています。





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