2018年02月16日 1514号

【みる…よむ…サナテレビ(471) 2018年2月3日配信 イラク平和テレビ局in Japan/児童婚を進める法制定の動き/宗教を使った政治支配を許すな】

 イラク国民議会は、10歳に満たない児童に結婚を強制する法律を制定しようとしている。2017年11月、サナテレビはこの法律案についてバグダッド市民にインタビューを行った。

 この法律案は、1400年も前のイスラム法が定めた「女子の結婚最低年齢」を口実に、9歳の児童婚を合法化しようとする。このような悪法を推進しているのは部族勢力やイスラム主義勢力だ。アバディ政権はこれらと結託し、保守的な価値観で人びとを支配しようとしている。

 9歳の子に結婚を強いるのは人権抑圧そのもの。児童虐待以外の何物でもない。インタビューに答える市民もこの法律の不当性を次々に訴える。

 ある芸術家は「私はこの法律に反対します。これは犯罪です」と断言。「子どもを支援し、この法律が間違ったものであると分かるように人びとに知らせなければならない」と主張する。声を上げて社会問題にしていくことが重要と言う。

 メディア関係者の女性は「児童婚の問題は純粋に選挙目当ての問題だ」と指摘する。宗派主義勢力や部族勢力がこんな法律を作ることで影響力を強めようとしているのだ。女性はそのような勢力の拠点になっている聖職者の事務所を閉鎖するべきと主張している。

 別の芸術家もこの法案制定の背後にいる宗派主義勢力を批判する。そして、イラク社会が宗教によって支配されることなく「ヨーロッパがキリスト教会との間で築いてきたような関係を築く」こと、宗教の政治に対する支配と影響を排除し、政教分離を実現していくことを呼びかける。

 ある医師は「出産時に15歳の少女の死亡率は、20歳以上で出産した女性の死亡率よりはるかに高い」と事実を示し、「児童婚は、子ども時代を殺してしまうだけでなく、誰かの命を実際に奪う」と訴える。宗教を使った政治支配が人を殺してしまう実態を明らかにしている。

 日本でも安倍首相らが靖国神社参拝と一体で憲法9条改悪と戦争政策を進めている。日本中の神社で改憲署名が集められている。

 宗教を利用した不当な支配と闘う必要があることは、イラクも日本も共通している。児童婚に反対し人間の自由と平等を獲得するために声を上げるイラク市民と連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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