2018年02月23日 1515号

【自衛隊攻撃ヘリが民家に墜落/軍隊は百害あって一利なし/被害生む軍事費を削減せよ】

 沖縄では2月9日、またもや米軍機オスプレイが部品を落とした。在沖米軍のヘリ事故は2016年12月、名護市沖で大破した事故から1年余りで9件になる。自衛隊のヘリ事故も相次いでいる。17年8月岩国基地での横転事故、青森県沖での墜落事故、10月浜松市沖での墜落事故。そして4件目が起こった。

住宅地で大破炎上

 陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県)のヘリコプターが2月5日、離陸後7分ほどで墜落、炎上。隊員2名が死亡、民家3棟が焼失した。1人で留守番をしていた11歳の少女が軽傷ですんだのは奇跡と言ってよい。佐賀県神埼(かんざき)市の現場は集落地であり、小学校や保育園があった。大惨事になりかねないところだった。

 事故機は、飛行中に回転軸と回転翼をつなぐメイン・ローター・ヘッドが破損。4枚の羽根のうち2枚がちぎれ、それぞれ東約350b、南東約500b離れた用水路まで飛び散った。離陸直後、不自然な飛び方と感じた管制官が呼びかけたが、応答がなかったと言われる。米陸軍の同型機も1月20日、カリフォルニアで墜落している。機体の問題か、操縦ミスなのか。今回の事故原因について自衛隊からの発表はまだない。

 事故機は対戦車攻撃ヘリAH64D、通称「アパッチ・ロングボウ」。ボーイング社製で富士重工(現SUBARU)がライセンス生産をしたものだ。「世界最強ヘリ」として05年から導入。事故機は06年に配備された2番目に古い機体だった。メイン・ローター・ヘッドは飛行時間1750時間を目安に交換される。同機は配備12年目で、はじめて交換し、直後のテスト飛行で破損した。不良部品だったのか、整備能力に欠けた装着ミスなのか。再び起こらない保証はどこにもない。


軍事費の舞台裏

 同機には導入決定当初から不可解なことがついて回っている。01年の機種選定時、すでに次世代機開発が公表されていたにもかかわらず、陸自は64機を購入して全国に5隊ある対戦車ヘリコプター隊の主力機とするつもりだった。

 ところが07年、10機で調達打ち切りを表明。ボーイング社が次世代機AH64Eへ移行し、旧式の製造中止を決めたことを理由とした。当然、部品供給もなくなり、整備不能となっていく。事故機の交換部品に疑いがもたれる背景だ。

 注目すべきは、ライセンス生産を請け負った富士重工が防衛省を相手に訴訟を起こしたことだ。64機をあてにした富士重工が「約束が違う」と言えば、防衛省は「約束した覚えはない」。軍産仲間割れとあきれるだけではすまない。数千億円にも上る兵器調達計画が「口約束」で進んでいたこと自体が問題だ。

 富士重工はその後3機追加受注し、価格を当初の60億円から上乗せし83億円とした。それでもライセンス料や初期投資を回収できないため、10年に訴訟に踏み切り、結局、約351億円の損害賠償を手にしている。

 安倍政権下では訴訟など起こることはない。軍事産業とは一心同体。言い値を予算化しているからだ。防衛省は装備調達費の他に「初度費」として軍事産業の初期投資費用を保証する方法をとるようになった。市民向けには調達単価を低く見せることができる。すぐに旧式となるのがわかっていながら設備投資をしても利益は保証される。軍産複合体は「役立たず」の危険な兵器を積み上げることに何のためらいもないのである。

命と安全の阻害物

 その典型の一つが陸自が導入するオスプレイだ。陸自はオスプレイの2倍以上の人員や物資を空輸できるCH47大型ヘリコプターを55機も保有している。新たな輸送機などそもそも必要なかった。ところが18年度から4年間で17機のオスプレイを配備する。だが、今年納入予定の5機の行き先すら決まっていない。

 佐世保市の陸自相浦駐屯地に新設される水陸機動団(自衛隊版海兵隊)の輸送用に、と佐賀空港に隣接してオスプレイの駐機施設をつくる計画を立てたが、進んではいない。地元市民の反対は根強く、今回の事故でその不安は一層根拠あるものとなった。

 構造的欠陥だろうが、整備不良機だろうが、はたまた操縦ミスだろうが、殺人兵器が日常生活の場を侵食する異常さ。今回の事故は、改めて沖縄県民の恐怖と不安が日本列島のどこにでも存在するものであること、平和な暮らしにとって軍事基地は害、破壊者でしかないことを示した。

 政府が朝鮮の「ミサイル脅威」をどれほどあおろうと、それを現実の恐怖と感じる人はいない。恐怖は、在日米軍、自衛隊によって引き起こされているのだ。事故機の機種に限らず、米軍、自衛隊ともども全機の飛行を停止、点検すべきだ。

 国会に提出されている軍事予算案は5兆2千億円にのぼる。それにより、自衛隊はどんな兵器を揃え、どんな危険を市民生活に及ぼすのか。一つ一つ検証することが市民が軍隊を統制し、縮小、解体していく第一歩でもある。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS