2018年03月02日 1516号

【安倍9条改憲の正体/自衛隊明記で任務・装備大転換/「専守防衛」唱えながら侵略戦争】

 安倍首相は、口を開けば憲法9条に自衛隊を明記しても、何も変わらない≠ニ言う。大嘘だ。頭にあるのは、9条に縛られた「守る自衛隊」から、9条の制約なく武力を行使する「攻める軍隊」へと変えることだ。国会答弁でもその本音があらわになっている。

「専守防衛」が危険招く?

 安倍首相は2月14日、衆院予算委員会で「(専守防衛は)純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい。相手からの第一撃を事実上甘受(かんじゅ)し、国土が戦場になりかねないものだ」と述べた。

 政府が繰り返してきた「専守防衛」とは、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則(のっと)った受動的な防衛戦略の姿勢」(防衛白書)とされる。「戦力不保持」を定めた憲法第9条2項を普通に読めば、軍事組織である自衛隊が憲法違反となることは小学生でもわかる。違憲の自衛隊を無理やり「合憲」とするために日本政府が持ち出したごまかしが「専守防衛」だ。

 同じ答弁で安倍は、ミサイルの命中精度が高まっているとして「攻撃を受ければ回避するのは難しく、先に攻撃した方が圧倒的に有利になっているのが現実だ」と明言した。その上で、「専守防衛の下で自衛隊員の安全を確保しつつ相手の脅威の圏外から対応できるミサイルは必要不可欠だ」として長距離巡航ミサイル保有が必要と主張した(2/14産経など)。

 「専守防衛」の制約があるから、国土が戦場となってからしか反撃できないのだ、と市民を脅し、先制攻撃容認の「国民世論」を作り上げようとする。そして、「専守防衛」が「原因」で、自衛隊は圧倒的に不利な戦況で戦わなければならないのだから、兵員・装備の被害を最小限に抑え反撃するためには巡航ミサイルが不可欠と「理屈」づける。誰が見ても侵略兵器である長距離巡航ミサイル導入を、ためらいなく口にできるのである。

戦争法での変貌を憲法に

 一方で安倍は「専守防衛順守」も表明する。9条への自衛隊明記について「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と繰り返す。だが、安倍政権が強行した憲法解釈変更、戦争法で「任務や権限」はすでに大きく変更されている。

 まず、憲法解釈変更を閣議決定し、国土への攻撃だけではなく「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」も「自衛権行使」の対象であるとし、軍事行動を認めた。

 戦争法では、「存立危機事態」を新たに設け、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」、つまり軍事同盟国への攻撃も自らへの攻撃として武力行使する「集団的自衛権行使」への道を開いた。また、「シーレーン(海上輸送路)」の封鎖などを「重要影響事態」とし、米軍の兵站(へいたん)を担うなど軍事行動の対象とした。他にもPKO(国連平和維持活動)での他国軍の警護など軍事行動の機会を広げている。

 大多数の憲法学者は、こうした戦争法による自衛隊の軍事行動を憲法違反と批判してきた。安倍はその合憲化をもくろんでいる。

全軍事行動の制約なくす

 戦争法は、平時から戦時まで「切れ目のない安全保障環境の整備」=軍事行動の機会を設け、地理的な制約も無くし、いつでもどこででも「防衛」「国際貢献」の名による武力行使を可能とした。

 さらに、長距離巡航ミサイルや空母保有、核武装の可能性まで探り、これまで憲法上持てないとしてきた侵略兵器を導入し、装備面からも自衛隊を「侵略できる軍隊」に大きく変貌させようとしている。

 そうした自衛隊の存在を憲法に書き込むことで、文言上も合憲化する。つまり、戦力不保持を定め交戦権を否認した憲法第9条2項を死文化し、「防衛」とさえ唱えれば侵略戦争をも合憲化することになる。それは、憲法の基本原理である平和主義そのものの否定である。憲法前文と9条で世界に約束した「戦争しない国」から、その憲法を変えた「戦争する国」への大転換なのである。

 改憲阻止とセットで戦争法を廃止することが必要だ。

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