2018年03月02日 1516号

【みる…よむ…サナテレビ(473) 2018年2月17日配信 イラク平和テレビ局in Japan/電力民営化にNO! ―イラク市民の声】

 イラク政府は、電力の民営化を推進し、市民に電気料金値上げを押しつけている。2018年1月、サナテレビはこの問題について市民にインタビューした。

 最初に登場する経済評論家は、政府が赤字の埋め合わせとして電力供給サービスを含む公営事業の民営化を決定したことを批判する。

 この評論家は「イラクでは発電施設はすべて政府が所有し、運営は50年以上の経験を持つ電力省とその職員だからできる。何の実績もない民間企業は管理しかできない。電力の民営化は成功していない。正当化もできず、必要とも言えない」と断言する。

 さらに、「政府は電気料金の30%しか徴収できていない。意図的に収入を減らして赤字にし、公的事業の失敗を民営化に向かわせる口実にしている」と続ける。民営化当初は安い料金であっても、「『生産費が上がったから電気料金を値上げする』と言ってくる可能性が非常に高い」と言う。

 「連中は私たち市民をだまし討ちにしようとしている。民営化は、ほんのわずかな人数の搾取者の利益にしかならない」との批判は的確だ。

 市民活動家たちは「この民営化はIMF(国際通貨基金)が指導している」と策動の背景を暴き、電力料金の値上げによって湯沸かし器やエアコンを使えない市民が出ることを心配する。「市民が人間らしく暮らすのに必要なこうした設備が使えない」状態に追い込まれるからだ。

 結局は、市民が高い電気料金を払わされ、何より貧困層の生活が圧迫される。「私たちは、民営化は階級間の格差を増大させると見ている」との指摘は鋭い。実際、昨年末から、電力民営化による電気料金値上げに抗議する市民のデモが各地で始まっている。

 番組はイラクの電力民営化の問題点を明らかにした。日本でも、国鉄分割・民営化の過程で赤字キャンペーンが張られ、民営化後はローカル線の廃止をはじめ市民に犠牲が押しつけられた。手口はそっくりだ。

 また、こうした電力民営化を背後から推し進めているIMFの主要拠出国は日本政府であり、共犯者といえる。イラク市民と連帯し、電力民営化をやめさせなければならない。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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