2018年03月09日 1517号

【みるよむ(474) 2018年2月24日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの若者に広がるエイズの被害】

 イラクでは今、エイズ(後天性免疫不全症候群)が若者に広がっている。ところがイラク政府はまともな対策を全くとっていない。2018年1月、サナテレビはこの問題についてバグダッドの市民にインタビューした。

 かつてのイラクではエイズ被害は見られなかった。保健省と医療機関が対策をとっていたからだ。イラクは中東地域でも医療衛生の水準が高く、コレラなどの伝染病の広がりもほとんど阻止されていた。

 市民も「エイズはイラクではなじみのない病気」と語る。だが状況は激変してしまった。「エイズがここ10年間で広がったことは明らか」と指摘する。2003年占領以後、医療を含む社会サービスが破壊されてしまったのだ。

 米軍は病院を空爆し、その後の政府は公衆衛生や公的医療に何の関心もない。「保健省はこの分野ではまともな役割を果たしていない」という状態である。

保健省の責任を問う

 政府の責任は医療面にとどまらない。政府が許可し増加しているマッサージセンターが、売買春のセンターとなっている。これが若者にエイズを急増させている元凶だという。ある市民は「保健省こそがエイズの蔓延を招いた原因なのです」と断言する。

 サナテレビは、保健省がエイズの蔓延に沈黙し病気と闘うことも対策をとることもないと指摘する。「市民に影響を与えているエイズの健康被害に対してあなた方は何をしているのか」と政府に問いを突きつける。

 短い映像だが、悲惨な現状とその背後にある政府の姿勢を明らかにし、問題を鮮明にする。ジャーナリズムとして問われる姿勢を示す番組だ。

 この惨状に日本も関与している。日本政府は占領に参加し、イラクの医療崩壊を引き起す共犯者となった。その後、医療、水・公衆衛生等の分野への20億ドル(約2千億円)をはじめ132億ドル(約1兆4千億円)の経済援助を行ったが、それは腐敗した政治家たちの私腹を肥やしただけで何の役にも立っていない。

 日本政府に腐敗政権への「援助」をやめさせ、戦争・占領の責任を取らせ、イラク市民に賠償することを要求したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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