2018年03月14日 1518号

【軍事訓練・演習激化による事故続発 安倍が出現させた「戦時下・日本」/安倍改憲で人権は軍事にひれ伏す】

全国に広がる米軍事故

 2月20日、米軍三沢基地(青森県三沢市)に所属するF16戦闘機が離陸直後に補助燃料タンク2個を小川原湖に投棄した。補助燃料タンクは全長4・5m、直径1m、乾燥重量215s。燃料は1400g入る。1・3dのタンク2本が空から降ってきたことになる。目撃証言では、高さ15mの水柱が上がり、湖面の氷に直径15mの穴が開き油の強い臭いがしたという。

 落下地点の近くでは、漁船5、6隻が操業中。200mの距離で操業している船もあった。直撃しなくとも転覆すれば、漁業者は氷点近くの湖水に投げ出されるところだった。小川原湖にはジェット燃料の油が浮き、シラウオ、ワカサギ、シジミ漁は全面禁漁となった。一日あたり300万円の損失だ。

 米軍機は離陸直後にエンジンから出火。機体を軽量化し爆発を防ぐために補助燃料タンクを切り離したとされる。機体を守るか、民間人を守るか。米軍は機体を守った。

 沖縄では2月8日、垂直離着陸機オスプレイのエンジン吸気口が落下し海岸で発見された。昨年末には保育園と小学校にCH53ヘリの部品が相次いで落下している。昨年10月にはCH53ヘリが牧草地に墜落、大破炎上した。

 艦艇の座礁・衝突、航空機の墜落・部品落下とここ1年間に起こった在日米軍の重大事故は10件を超える。

自衛隊も重大事故

 重大事故は自衛隊も引き起こしている。

 2月5日、陸上自衛隊のAH64D攻撃ヘリが佐賀県で住宅地に墜落し、民家が炎上。小学5年生の女児が軽傷を負い、乗員全員が死亡した。事故現場近くの認定こども園には、グリスが飛散していた。

 墜落原因は主回転翼を回転軸に取り付ける「メインローターヘッド」の破損だと発表されている。その1週間後の2月13日、海上自衛隊舞鶴基地所属の哨戒ヘリコプターが外装を止めるボルトとワッシャーを「紛失」した。また、昨年8月には海自ヘリが、10月には空自ヘリが訓練中に墜落する死亡事故を起こしている。北海道では昨年6月、双発プロペラ機が墜落し乗員4人が死亡した。

止まらぬ軍事行動

 米軍・自衛隊が相次いで事故を引き起こしているにもかかわらず、安倍政権は徹頭徹尾軍事優先だ。

 米軍は青森県のF16エンジン出火・燃料タンク投下事故の翌日から、同型機の飛行を続けている。小野寺防衛大臣は「当該機固有のもの。飛行前の手順にのっとり、すべての機体の点検が確実に行われている」との米空軍三沢基地司令官の説明を受けたのみで、地元が「事故原因究明まで飛行停止」を要望していることもかえりみず飛行停止は求めていない。「飛行前の手順にのっとった点検」は、事故機も当然行われていたはずだ。だがエンジンから出火した。つまり、米軍の「飛行前機体点検」は今回の事故防止に全く効果がなかったということだ。ならば、再発の可能性は否定できない。

 佐賀県の自衛隊ヘリの事故での事故調査と現場検証は陸上自衛隊が主体だ。佐賀県警は捜査本部すら立ち上げていない。衆院予算委員会で「運輸安全委員会」との合同調査を求められた小野寺防衛大臣は拒否した。事故調が報告書を防衛大臣に提出するのは4か月後。調査が始まったばかりなのに、現地の陸自はわずか17日後に同型機以外のヘリ飛行を再開した。

 破損した「メインローターヘッド」は中古品で、しかもメーカーである米・ボーイング社が損耗部分を修理したものだということが明らかになっている。中古部品の劣化による強度不足・修理ミスが原因で他機種も中古部品で整備しているのなら、事故機と同様の脆弱性(ぜいじゃくせい)を抱えながら飛んでいることになる。

軍事優先は人権無視

 安倍首相は、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル開発、中国の海洋進出を口実に自ら軍事的緊張を高めている。だから、民間に被害が及ぼうがお構いなしに軍事行動を1日も欠かさない。軍事的緊張を維持し、世論を改憲に誘導するために、安倍政権によって日本はすでに事実上の戦時下にされている。米軍・自衛隊による事故被害者に対する心ないバッシングはその表れだ。「国防」に苦情を申し立てる者を「非国民」に仕立て上げる。

 安倍9条改憲は、先制攻撃や侵略のための能力を備えつつある自衛隊を合憲化する。その行く末は「国益」を守る軍事行動のためには人権侵害も当然とする「新憲法」下の日本だ。一連の軍用機事故対応がその証だ。市民の命と人権を守るのか、「国益」=「1%」の利益を守るのかが今、問われている。



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