2018年03月14日 1518号

【ミリタリー・ウォッチング 中国「異常な軍拡」脅威論の虚実 安倍大軍事予算の正当化が目的】

 6年連続の増加で史上最高5兆1911億円というとてつもない2018年度軍事予算案。だが、防衛省や御用メディアでは、台頭する中国の軍事的脅威に対抗するには「全く不十分」との「感覚」が堂々と幅を利かしている。中国の「異常な軍拡」「脅威」をあおり、いつ攻めてくるかわからない≠ニ印象をふりまく。メディアでそれらが事実に基づいて検証されることはほとんどない。

日米も異常な′R拡だ

 たとえば、防衛白書(2016年版)は「(中国の国防費は)毎年ほぼ一貫して2ケタの伸び…28年間で約44倍」と強調する。ここには意図的な誇張がある。

 中国は軍事大国化をめざし、経済急成長と急激なインフレもあいまって軍事費は名目2ケタ台の伸びを続けた。兵員約230万人の人件費上昇もこの伸びの大きな部分を占める。ただし、物価上昇率を差し引けば、直近十数年間の増大は1ケタ台。中国民衆の生活を圧迫する軍事費増は全く誤りだが、社会保障費や教育費も数字上は同様に2ケタ十数%ずつ増大している。日本も高度経済成長時代、60年の軍事費1620億円から79年の2兆590億円まで毎年ほぼ一貫して2ケタの伸び≠セったのだ。

 世界2位となった中国の軍事支出は、対GDP(国内総生産)比では2017年で1・98%と、ロシアの5・3%、米国の3・3%には及ばない。同年の財政支出に占める軍事費の割合は、中国5・38%、日本5・25%とほぼ同じ。さらに、人口1人当たりの軍事費(ストックホルム国際平和研究所14年より)をみれば、米国1891ドル、日本360ドルと、中国155ドルを大きく上回る。これが事実である。

 中国の「2ケタ軍拡」「異常な軍拡」への批判は、本来そのまま日本や米国にかえってくるものだ。

 また、日本が南西諸島での自衛隊増強の最大の口実とする中国の海軍力増強の実態はどうか。

 日中の海軍力について、兵員数、戦艦、航空機の数で圧倒する中国が断然優位として海洋進出の「脅威」が叫ばれるが、ほとんど「子どもだまし」だ。「米国の2倍に急増」とされる中国海軍1054隻には、海洋探査船からタグボートまで含み、主要艦船の大半は今も旧式(木製)甲板だ(進藤榮一『中国・北朝鮮脅威論を超えて』耕文社)。

海軍力は日米が圧倒

 保有する部隊や兵器(艦船や航空機)の攻撃能力の質的比較によらなければ、実際の戦力比較にはならない。むしろ、世界の五指に入る日本の海上自衛隊の実力は、攻撃型潜水艦、イージス艦、ヘリ空母「いずも」などの能力を過小でなく正確に評価すれば、中国海軍の実力を凌駕(りょうが)していると言って間違いない。

 はっきりしているのは、11隻の超巨大空母(すべて原子力空母)を持ち「巨大な空母群に加えて、57隻の核駆動の攻撃用潜水艦と巡航ミサイル潜水艦を保有し、少なくとも米国以下の13か国の海軍すべての排水総量(戦闘能力)をしのいでいる」(13年、ゲーツ米国防長官<当時>)米海軍に対し、中国海軍は全く比較にならないレベルという現実だ。

 中国の「軍備増強」も日本を含む軍拡潮流の中にあり、「異常さ」の強調は、安倍大軍拡を正当化するキャンぺーンであることがわかる。いまもっとも大事なのは、米国を頂点に日本、中国など一握りの経済強国が繰り広げる軍拡の不当さを見抜き、軍縮を迫ることだ。世界の圧倒的世論はここにあるという点である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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