2018年03月14日 1518号

【市民の税金・資産ぶんどり 秋に住民投票ねらう 大阪都構想はいらない】

 日本維新の会(維新)の松井大阪府知事と吉村大阪市長は2月22日、大阪府・市大都市制度協議会(法定協)で大阪都構想の下、大阪市を4特別区に分割する「4区B案」を決めた。今後、6月末までに特別区設置協定書をまとめ秋には再び住民投票を実施する構えだ。維新が、15年5月の住民投票で否決された都構想にここまで固執するのは、カジノ、万博と地下鉄や水道等民営化で大企業のための儲け口を提供するためだ。都構想を復活させてはならない。


カジノ、万博、民営化

 都構想は、大阪市を廃止し4特別区に分割して実質的に大阪府の下部組織にし、市民の税金と資産をぶんどり、大規模開発、民営化に巨額の税金をつぎ込むものだ。

 都構想でめざす大阪の姿を示した府市副首都推進本部「大阪副首都ビジョン」にはこう記されている。「世界の都市間競争を戦いうる都市」として「成長エンジンの役割」をもち、阪神高速道路淀川左岸線や鉄道延伸、港湾整備などの大規模公共事業や公共サービスの民営化を打ち出し、「世界で最もビジネスしやすい環境」をめざす。その起爆剤として2025年大阪万博とカジノ・IR(統合型リゾート)施設を最重要に位置づける。

 一方、「大阪が副首都として成長を実現し、その果実によって豊かな住民生活を実現」とされ、市民生活向上は大企業の儲けの「おこぼれ」にありつけばよいとする。破綻したアベノミクスの二番煎(せん)じで、徹頭徹尾、大企業の利潤拡大ありきなのだ。

 カジノ構想は、大林組、鹿島建設、鴻池組らのゼネコン、カジノ関連産業、電通、博報堂など15社が名を連ねる利権団体「大阪エンターテイメント都市構想研究会」が持ち込み、維新が呼応したものだ。

 カジノ、万博、地下鉄、水道の利権は巨大だ。カジノを核とするIR自体、数千億円規模の巨大施設。万博は会場建設費だけで1250億円(うち府市で400億円負担)、アクセス道路等に40億円、地下鉄中央線の延伸に640億円などが必要だ。

 また公営事業の民営化も、資本にとって喉から手が出るほどほしいターゲットだ。

 4月に民営化される大阪市営地下鉄は、16年度経常利益は370億円、累積黒字は約1200億円を超え、鉄道部門の収益はJRを除けば関西最大だ。新会社「大阪メトロ」の社長はパナソニック、部長はオリックス、関西電力等が並び、不動産や駅前開発にも乗り出すという。

 吉村市長が民営化に執着する水道事業は、15年決算で年間650億円の収益を出し黒字145億円の優良事業だ。この事業を、維新は民営化し3年後に株式を売却する。水道民営化では、株主への配当が優先され水質悪化と料金高騰を招く。世界を見ても、パリ、ベルリンなどの都市で巨額の費用をかけて再公営化している始末だ。安価で安全な命の水を提供する優良事業を民営化する理由はなく、資本の儲け口提供でしかない。

市民生活はどん底に

 一方、市民は犠牲ばかりが強いられる。カジノは犯罪や多重債務等を誘発し、巨大開発事業、万博の巨額の費用負担がのしかかる。万博運営費は830億円と見積もられるが、東京五輪の費用膨張を見れば、負担がふくれあがることは確実だ。府民の税金と利用で育てた超優良鉄道を売り渡した地下鉄民営化は、営利優先による安全対策の遅れの懸念がすでに指摘されている。水道民営化に至っては、市民の命に直結する問題だ。都構想を許せば、大企業には巨大開発で儲けを保障するが、市民生活はどん底に突き落とされるだけだ。

 維新は、「4区B案」は財政も黒字で将来的に発展できると自画自賛する。その「黒字」とは、15年の住民投票前に府市が試算した特別財政調整交付金を特別区に3・2%上乗せした配分等で収入を引き上げ、特別区設置にかかるコストを消し込んでいるだけだ。前の通りの配分なら5年間で400〜600億円の赤字となるまやかしの数字だ。

 しかし、吉村市長は「(特別区について)市民に中間説明はしない」という。一方で、住民投票で都構想が再度否決されても、「都構想もどき」である総合区に移行して活用するための議決を議会で得たい、と明言(2/22)。「財界のための市民の税金ぶんどり」に道を開くためだ。都構想も総合区もいらない。反対世論を強めよう。

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