2018年03月14日 1518号

【幸せになるために働くのに 働いて命を失ってはならない/労働時間法制学習会で過労死遺族が訴え】

 あるべき労働時間法制について考える市民学習会が2月28日、衆院第2議員会館で開かれた。日弁連が主催した。

 多くの過労死事件を担当してきた川人博弁護士が基調講演。「高度プロフェッショナル制は、今まで管理監督者もかろうじて持っていた深夜手当を受ける権利などをすべてなくす究極の労働時間規制撤廃制度だ。きわめて危険で、絶対容認してはならない」と強調した。

 続いて発言したのは、過労自殺した電通新人社員、高橋まつりさんの母幸美さん。

 「娘は表現者として活躍したいと、大手広告代理店に入社した。9か月後、長時間労働とパワハラで精神障がいを発病し、命を落とした。

 上司は残業時間を正確に記録しないよう指示。娘は『この会社おかしい。東京の夜景は私たちの残業がつくっている』と言っていた。連続3日間、徹夜で仕事したことも。

 労災は認定されたが、娘が生きて戻ってくるわけではない。娘の人生も、努力も、夢も、未来も、取り返しがつかない。

 『働き方改革』関連法案は過労死の防止と矛盾する。過労死遺族として絶対に許すことはできない。時間外労働の上限を過労死ラインを超える100時間とすることは、労働者を過労死させることを職場に許可するものだ。

 幸せになるために働いているのに働くことで命や健康を失っている現実がある。時間外労働の上限100時間未満の見直し、裁量労働制拡大・高度プロフェッショナル制度の削除、勤務間インターバルの義務付けを求める」

「過労死は人災だ」

 NHK記者、佐戸未和さんを過労死で亡くした母恵美子さんもマイクをとる。

 「未和は私のかけがえのない宝、生きる希望、夢、支えだった。私は二度と心から笑うことはなく、ただ未和の過労死の事実を世の中に伝えたいとここに立っている。

 未和の勤務記録票を見て泣いた。深夜残業を連日続け、土日出勤を繰り返す。まともに睡眠をとっていない。

 亡くなる直前1か月の時間外労働は209時間。記者には事業場外みなし労働時間制が適用され、何時間働いても労働時間は同じだった。上司は『記者は時間ではなく裁量労働で、個人事業主のようなもの』と、労働時間を自己管理できず死んだ未和が悪かったように言う。未和の死は、制度を乱用した労務管理の怠慢による明らかな人災だ。

 裁量労働というが、仕事の量は自分で決められない。裁量労働制の拡大は長時間労働を野放しにし、ずさんな労務管理の格好の言い訳になる。

 同じ苦しみを背負う人が現れないよう、働く人の命と健康をしっかりと守る法律が作られることを切に願う」

 このあと、印刷通販会社の長時間・過密労働を改善する闘いについて全印総連プリントパック京都分会の中山悠平さんが、新潟県教育委員会で10年間に2人の過労死が出ていることなどについて毎日新聞の東海林(とうかいりん)智さんが、それぞれ報告した。

 学習会の数時間後、安倍首相が裁量労働制の拡大を法案から全面削除することを決めたとの速報が流れた。

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