2018年03月28日 1520号

【森友文書に日本会議が/丸ごと削除が証明する「不都合な事実」/国政を歪め、改憲勢力を支援】

 森友学園への国有地売却に関する公文書改ざん問題。元の文書には学園の理事長(当時)や安倍首相が関わる「運動団体」として日本(にっぽん)会議の名前が書かれていたが、改ざんによりすべて消された。財務省はなぜ、日本会議を隠したのか。背景を探ると、極右勢力への便宜供与を通した日本右傾化策動という森友問題の核心がみえてきた。

あわてて否定声明

 日本会議に関する記述が削除されていたのは、森友学園との国有地取引をめぐる財務省の決裁文書。同省が3月12日に公表した調査報告書によって明らかになった。

 改ざん前の文書は、森友学園の籠池泰典理事長(当時)を「日本会議大阪代表・運営委員」と紹介。日本会議に連携する国会議員連盟が結成され(日本会議国会議員懇談会)、「特別顧問として麻生太郎財務大臣…副会長に安倍晋三総理らが就任」と説明していた。学園を来訪した国会議員の名前も列挙していた。

 これらが皆、改ざんで削除された。「昭恵夫人」「事前の価格交渉」「地中ごみ」同様、「日本会議」が丸ごと削除の対象になっていた。メディアがそこに注目するのは当然だろう(テレビ東京「ゆうがたサテライト」など)。

 これに対し日本会議は3月13日付の声明で、「かかる報道は、事実と異なり極めて遺憾である」と反論した。籠池氏は7年前に日本会議を退会しており、関係は消滅している。よって今回の森友学園の問題に関し、「日本会議に疑惑の目を向けられるいわれはない」というわけだ。

 実は日本会議にとって、文書改ざんをめぐる報道は最悪のタイミングだった。同会が取り組んできた改憲賛同署名運動の節目となる集会の直前だったからだ(都内で3月14日に行われた「1000万人達成!憲法改正の国会発議!中央大会」のこと)。

 3月25日の自民党大会に合わせて改憲ムードを盛り上げるはずだったのに、疑惑の団体として自身が注目され、それどころではなくなった。思わぬ事態に直面し、日本会議の幹部連中は頭を抱えているに違いない。

素性を隠し改憲運動

 ここで、日本会議についておさらいしておきたい。日本会議は安倍政権のコアな応援団となっている日本最大の右翼組織である。宗教団体「生長の家」に出自を持つ活動家たちが組織運営の中枢を担い、様々な右派ムーブメントを主導してきた。

 彼らは安倍政権下を最大のチャンスととらえ、改憲策動に取り組んでいる。「自衛隊の存在明記」を前面に打ち出した改憲案を安倍首相に指南したのは日本会議である。国民投票で確実に勝つという観点からの戦略だ。

 運動面では、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」と称する大衆団体を立ち上げ、1千万筆を目標に改憲賛同署名を集めてきた。この署名は国民投票に向けた賛同者名簿として活用される。同会の幹事長を務める百地章・日本大学教授は「送られた署名を手元に置いておく。これを元に、国民投票の声かけをするのです」と正直に語る。

 これからが本番――そう意気込んでいた矢先に、森友文書の件がさく裂した。宗教右翼の素性を隠し、保守系市民運動として活動する日本会議にとって、「政権を陰で操るカルト集団」というイメージの拡散は致命傷になりかねない。だから慌てて火消しを図っているのである。

安倍案件ゆえの優遇

 たしかに、籠池前理事長は日本会議の役員を騙(かた)っていたのかもしれない(不当に長期勾留されている本人には確かめようがない)。だからといって、日本会議は森友学園と無関係と言い張るのは無理がある。同会に集う極右人士たちが森友を持てはやしてきたのはなぜか。「国のために命を投げ出すこと」を幼少期から刷り込んでいく教育方針が日本会議が目指すものと一致していたからだ。

 たとえば、議員懇の会長として改ざん前の文書に名前があった平沼赳夫元経済産業相である。彼は国会で森友学園が運営する幼稚園を取り上げ、園児に「君が代」を歌わせ、「教育勅語」を暗唱させる教育を称賛していた(2013年10月22日/衆院予算委)。

 何といっても、現職の総理大臣夫人が学園の軍国主義教育に「感涙」し、開校予定だった小学校の名誉校長まで引き受けていた。安倍首相もかつては「私の考え方に非常に共鳴している方」と籠池前理事長を評価していた。

 安倍首相が肩入れする極右トモダチの案件であるがゆえに、財務省は無理筋の優遇措置を連発した。この癒着構造を隠すために決裁済文書の改ざんが行われたのである。

   *  *  *

 ニューヨーク・タイムズのジョナサン・ソーブル東京特派員は「森友学園の問題は、日本の政治や社会の右傾化を象徴する一つの例だと見ている」と語る(2017年4月13日付毎日新聞)。首相夫人や有名政治家が「戦前の偏った思想教育」を支援していることに大変驚いたという。

 国政を私物化し、改憲勢力の伸長を手助けしてきた安倍政権。逃げ切りを許さず退陣に追い込み、改憲策動を阻止しなければならない。(M)



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