2018年04月06日 1521号

【過労死合法化、格差と低賃金温存 安倍「働かせ方大改悪」法案 すべて撤回しかない】

 安倍政権は、「働き方改革」関連法案から裁量労働制の対象業務拡大案を削除することを表明した。労働組合や全国過労死を考える家族の会など市民による抗議行動、マスコミ報道などを通じて裁量労働制に対する批判世論が高まり、政府・厚労省の嘘とペテンが暴かれたからだ。

 しかし、安倍は労働時間法制や、高度プロフェッショナル制度(高プロ制)など「働き方改革」ならぬ働かせ方大改悪≠フ一括法案提出を依然として諦めていない。連合や野党の一部には、裁量労働制と高プロ制はだめだが他は労働者側の要求、との誤ったとらえ方が存在する。

 一括法案は、すべて反労働者的なものであり、その危険性を改めて確認しよう。

すべて反労働者的

 法案そのものは予算審議終了の4月に入ってから提出と報道されている。昨年作られた法案要綱の項目を見れば、その中心は、(1)残業時間の上限規制(2)正規と非正規の均等待遇(3)残業代ゼロ制度(高プロ制)などである。共通して、過労死ラインの労働を強いることができ、なおかつ賃金を低く抑えることができるものとなっている。

年960時間 残業可能に

 (1)残業時間の上限規制は「過労死ラインの合法化」といえる内容だ。

 時間外労働は、月45時間、年360時間を基本とするが、「臨時的に」1年に6か月以内は月100時間、2〜6か月に月平均80時間の残業を可能とする。法定休日に働いた分は、労基法36条に基づく労使合意が必要な36(サブロク)協定上の労働時間にカウントされないため、休日労働を合わせれば、年間最大960時間が可能な残業規制となる。

 現行の過労死認定基準は、1か月間に100時間超または2〜6か月間にわたって1か月当たり80時間超。それを可能とし、過労死ラインを法律で容認するものだ。過労死認定をめぐる裁判所の判決では、月83時間や62時間の時間外労働でも労災認定されている。法案どおり残業が認められると、過労死裁判の認定基準まで大きく後退する危険性が出てくる。

差別の合法化・固定化

 (2)の「正規と非正規の均等待遇」も、その内容は「差別の合法化・固定化」である。

 正規労働者と均等待遇を受ける非正規労働者の条件は、「雇用期間の全期間で、職務の内容や配置の範囲が正規労働者と同一の範囲で変更される労働者」と規定される。すなわち、全国への配転に応じたり、管理職になることが予定される非正規労働者がはじめて均等待遇を受けることができるとする。そんな非正規労働者は0・1%もいない。

 しかも、均等待遇の対象となるのは、2012年以来、安倍政権が推進してきた「限定正社員」だ。無期雇用だが労働条件は非正規の時と大きくは変わらない。「均等待遇」は名ばかりで、実際の賃金・労働条件は何ら改善されない。差別を合法化・固定化するのが狙いなのだ。

労働時間規制すべて除外

 中でも、(3)高プロ制=残業代ゼロ制度は最悪だ。

 1日8時間・週40時間の規制、休憩時間の規制、時間外労働・休日・深夜も含めた割増賃金の規制など、すべての労働時間規制が適用除外となる。現在は1か月4日の休日付与という案が出ているが、それでも、1日24時間で26日間連続勤務が可能となる。

 米国では、以前から「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)」と呼ばれる、類似の制度が導入されている。年収要件は259万円以上。2015年の日弁連の米調査報告も、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度の対象者のほうが、非対象者よりも労働時間が長くなっていた」「当初は対象者が限定されていたが、どんどん拡大されてきた歴史がある」としている。

 経団連は年収400万円以上の労働者への適用を狙っている。長時間労働の日本では、この制度の適用は米国以上の問題を引き起こし過労死を続発させる。絶対に許してはならない。

24時間365日働け

 ワタミグループ創業者の渡邉美樹自民党参院議員の発言が批判を呼んでいる。自社で過労死した女性社員が労災認定された後も、遺族との面会や謝罪を拒否し続けたのが渡邉。3月13日の参院予算委員会公聴会で意見を述べた過労死遺族を前に、あつかましくも「私も10年前に愛する社員を亡くしている経営者でございます」と発言。「お話を聞いていますと、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえてきます。働くということについてのお考えをお聞かせ願いたい」と平然と傷つけてはばからない。さらに、裁量労働制や高プロ制度は必要として、「働く方々にとっていいこと」「結果として労働時間も収まりみんながハッピーなことになる」と何の根拠もない持論を展開した。

 安倍の働かせ方大改悪は、渡邉のような24時間365日働け≠経営理念とするブラック経営者のためのものだ。

 安倍政権もろとも一括法案すべてを葬り去ろう。



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