2018年04月06日 1521号

【未来への責任(246)沖縄で初の強制動員研究集会】

 3月17日、第11回強制動員真相究明全国研究集会が沖縄大学の同窓会館において、沖縄恨(ハン)之碑の会と強制動員真相究明ネットワークとの共催で開催された。

 沖縄恨之碑の会共同代表の安里英子さんは「本土の団体と共同で朝鮮人強制連行問題についての集会が沖縄で開催できたこと、4つの沖縄で活動する団体がともに連帯して取り組んだのも今回が初めてで画期的なこと」とあいさつした。4つの団体とは、日韓の基地問題に取り組む『韓国・沖縄民衆連帯』、戦没者遺骨収集を続ける『沖縄戦遺骨収集ボランティア・ガマフヤー』、戦争とジェンダーの問題に取り組む『基地・軍隊を許さない行動する女たちの会』、そして沖縄戦・基地問題のガイドの活動をする『沖縄平和ネットワーク』である。県内外から集まった150名という参加者数がその証しだった。

 基調講演は2本。「天皇制を守る戦闘だった沖縄戦」と題して沖縄国際大学の石原昌家名誉教授は、日本軍は「県民指導要綱」により「軍官民共生共死の一体化の具現」を目指すという名目で住民に犠牲を強いたが、同時に「沖縄語を以って談話しある者は間諜とみなし処分す」と方言を使用した住民をスパイとして処罰することを通達し、国体護持を邪魔するものを非国民として排除、など天皇制延命のために住民を犠牲にした沖縄戦の本質を語った。

 在日朝鮮人運動史研究会の塚崎昌之さんからは「朝鮮人軍人・軍属の動員の実態とその被害」と題して志願兵、徴兵、軍属など多岐にわたる軍隊に関係する強制動員についての詳細かつ緻密な「全体像」が示された。志願兵制度の背景には貧困からの脱出や「徴用」にとられるより軍隊の方がマシという隠れた「強制性」の問題があったことや南方戦線の飢えた日本兵の「人肉食」の犠牲になることを恐れて蜂起した朝鮮人軍属を日本兵が殺害した悲惨な事例も報告された。

 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代さんの報告は衝撃的だった。軍隊の後方施設として位置づけられたのが慰安所であり、中国人女性を強姦した経験を持つ中国戦線から転戦してきた兵士で編成された第32軍の「性」の管理のために沖縄では、公的な施設が転用されただけでなく民家を改造したり軍隊が移動していく先々で設置された慰安所の数が延べ145か所に上る。その多くが住民の生活の場に置かれ、米軍上陸後はアブチラガマのような陣地壕にまで作られ、女性たちは雑役にも従事させられた。軍人軍属のような名簿はなくその数や規模は今も不明のままである、と沖縄の慰安所の実態の報告がなされた。

 「準外地」であるがゆえに慰安所が設置され、「軍隊は住民を守らない」どころか住民を盾に国体護持のため犠牲を強いた沖縄戦の歴史が示すものは、差別の犠牲者としての「沖縄」と朝鮮人差別については加害者の立場でもある「沖縄」だ。植民地主義を考える上で、その立ち位置の理解を深めることができる集会であった。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

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