2018年04月06日 1521号

【京都・東京原発賠償訴訟で判決 避難者原告が語る】

 3月15、16日に出された京都、東京の原発賠償訴訟判決は、ともに東電と国の責任を認定し、区域外避難者の避難の合理性(相当性)を認めた。一方、損害賠償額は期限を区切られ低額に抑えられた。原告らの思いを紹介する。

京都 原告、弁護団、 支援者が一体で

 報告集会で原告らは、原告、弁護団、支援者一体でかちとった判決と強調した。

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■中学の頃京都に来た。今年大学生になる。母が私たちを守ってくれたように、今度は私たちが立ち上がっていかなければと思っている。親が子どもたちを守ってくれたように、親を支えていく番だと思っている。

■母が本人尋問されている時、被害者なのに、何で加害者みたいなことさせられるのだろうと思って、話を聞くのもつらかった。原発の問題とか、関わるのを避けていた。子どもたちのために避難してくれたお父さん、お母さん、本当にありがとうございます。原発の問題だけじゃなくて、今の政権の問題もすべてそうだと思う。権力とかカネとか地位とか名誉とか守ろうとして、命をないがしろにしている大人が信じられない。私は許せない。訴訟が始まった時高校生だったが、今年成人した。ちゃんとした一人の大人として、現実に向き合っていければいいなと思っている。

■避難が認められたことは本当に大きい。避難する前、避難してから、子どもたちも元気なくして、避難したことが間違っていたのではないかと夫は自分のことを責めていた。私も自分を責めていた。今日から責めなくていいからねって、夫に伝えたい。

■震災当時21歳、(妻の)おなかに次男が。福島でずっと子育てしたいと思っていた。その次男も来週卒園式を迎える。福島で子育てできなくなった責任を負ってほしい。福島で子育てできない失望感で、うつ病にもなった。この裁判には、全部ひっくるめて、国と東電の責任を認めてほしいと思っていた。

■仙台市から避難。私は何も認められなかった。避難の権利も認められていない。仙台は空間線量が低くても土壌は汚染されている。同じぐらいの汚染で関東からの避難者はたくさんいる。同じように母子で避難してきて。今日は、やっぱりなという気持ち。かなり悔しい。国と東電の責任が認められたのは本当に良かったと思う。仙台市は(原発から)80`bしか離れていなくて、そんな怖いところで子育てしたくないと思うのは、母親だったら当然。避難の権利は当事者が決めていいと思う。まだまだ頑張っていかなければと思った。

東京 結論ありきの 低額賠償に怒り

 東京訴訟の原告の一人に判決の問題点を聞いた。

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 原告は私とおなかの子どもを含め3人。判決では、私の賠償は約70万円、子ども2人は0円となった。

 慰謝料は1人月約8万円、総額は差し引き前で1人約140万円。妊婦と子どもの場合、対象期間は12年8月まで(18か月)とされたから、約8万円×18か月分と計算されたのだろう。

 区域外避難者には以前、国の審査会の指針に基づき慰謝料として妊産婦と18歳以下の子どもに1人60万円が支給され、その後大人4万円、子ども12万円が追加された。その分の大人64万円、子ども1人72万円が140万円から差し引かれた。妊産婦以外の大人は1人12万円支給なので、その額が引かれるなら分からない話ではないが、引かれたのははるかに超える。妊産婦と子どもが何のために増額されていたのか意味がなくなる。

 さらに、ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)で受け取った額が引かれた。額の中身を精査せず、既に支払い済みだからと「避難雑費」分がそのまま差し引かれたのは納得いかない。受け取った額を差し引いて子ども0円になるなら、金銭面で裁判で争った意味はない。

 0円・低額賠償となった根本は、賠償額の算定期間が原則11年12月、長くても12年8月で切られたことにある。判決では、区域外避難者の避難の合理性を認めながら、根拠もないまま12年8月以降は突然、避難生活は不合理になるとする。賠償額の増大を抑えるための結論ありきの判断としか思えない。

 ADR支払いの算定は15年3月まで考慮され、住宅無償提供も17年3月までは継続していた。判決の賠償算定期間の基準とは大きなズレがある。ADRの支払い額を12年8月までの分で計算して差し引くなら辻褄(つじつま)は合うが、納得いかない。

 判決は「LNT(閾値(しきいち)なし直線)モデルは科学的に有力な見解」とし、低線量被ばくの健康影響も避難の相当性に値する、と良いことを述べた。そうならば、12年8月で被ばくが収まったという科学的な説明はできないのだから算定期間の判断には矛盾がある。この判決だと「現在は公的に認められた区域外避難者はいない。認められた避難者は5年前(12年8月)まで、過去の話だ」ということになってしまう。



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