2018年04月06日 1521号

【議会を変える 保育無償化宣伝より保育士待遇改善を 京都府向日(むこう)市議 杉谷伸夫】

 待機児102人! これが3月の向日市議会で大きな問題になった。向日市は、これまで年度初めに待機児を出すようなことはなかったのに昨年52名、そして今年は102名と急増している。今年深刻なのは、そのうち「就労中」の方が68名もいることだ。

 これだけ多くの方が保育所を断られて仕事を続けられないという事態は、何としても解決しなければならない。原因を担当部署に問い質しても「入所希望が想定を超えた」「様々な要因がからんでいて」などと歯切れが悪い。

 市も保育施設をそれなりに増やしてきた。この5年間で認可保育所が2つ、小規模保育所が2つ民間で開設され、定員増もおこなって総定員を990名から1214名に増やしてきたが、入所申込みの増加がそれをはるかに上回っている。子どもの数は大きく増えてはいないのだが、保育所に預ける選択をする保護者が激増しているのだ。向日市の0〜2歳児のうち保育所を利用申請する子どもの割合は2014年度に約35%だったのが2018年度には約45%に激増している。

 しかし、それだけでなく、保育士が確保できない問題が待機児をさらに増やしている原因であることがわかってきた。保育所の設備面の余裕はあっても、受け入れできないのだ。保育士1人が見ることのできる子どもの数は、国基準で4歳児以上は30人だが、1〜2歳児は6人、0歳児は3人だ。0〜2歳児の入所希望の激増で、施設はあるが保育士が確保できず、希望者を受け入れられない事態になっている。

 特に民間保育所で問題は切実だ。ある園では1年間に保育士の3分の1が、結婚・出産等を契機に辞めてゆき、保育士確保が死活問題になっているという。別のある園長は「若い保育士さんは、保育の熱意をもって園に入ってきて仕事をしてくれる。でも熱意だけでは続かない。5年間もすれば燃え尽きてしまうんです」と語っておられた。保育士の仕事に見合った待遇の改善が急務だと思う。

 市町村も保育の現場も苦労していても、結果として「保育所落ちた。仕事できない!」保護者を生みだしてはならない。そこで気になるのが、政府の宣伝する「保育無償化」だ。保育の無償化は当然実現すべきだが、受け皿づくりがセットでなければ、間違いなく待機児をさらに増やす。貴重な予算は、政権の人気取りの「幼児教育・保育の無償化」宣伝にではなく、まず、保育士の待遇改善、保育所の増設にしっかりと使うべきだとつくづく思う。
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