2018年04月13日 1522号

【朝鮮半島 4・27南北首脳会談へ 戦争終結へ世界史的変化の道開く 置き去りにされる安倍政権】

 韓国と朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は3月29日、南北軍事境界線上の板門店(パンムンジョム)の朝鮮側施設「統一閣」で南北高官級会談を開き、11年ぶりとなる3回目の南北首脳会談を4月27日に板門店の韓国側施設「平和の家」で開催することを発表した。5月までに開催される史上初の米朝首脳会談とともに朝鮮半島の緊張緩和へのきわめて大きな一歩だ。

信頼醸成の積み重ね

 一方、3月25〜28日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が中国を訪問した。習近平(シーチンピン)国家主席との会談で、金委員長は「朝鮮半島の非核化の実現に尽力することが我々の終始変わらない立場だ」「我々は北南関係を和解と協力の関係に転換する決意で、北南首脳会談を行い、米国と対話し、朝米の首脳会談をする」「もし南朝鮮と米国が善意を持って我々の努力に応え、平和の実現へ段階的に歩調を合わせるなら、半島の非核化の問題は解決される」と述べた。

 今回の一連の合意に至るまで、関係当事者は信頼醸成の努力を続けた。平昌(ピョンチャン)五輪・パラリンピックへ朝鮮代表団が参加し、南北対話が続いている間の軍事的挑発の停止を米朝両政府が順守し、米韓合同軍事演習も五輪後に延期された。3月5日、韓国の鄭義溶(チョンウィヨン)特使が金正恩委員長と会談した際には、金委員長は韓米両国が定例的な合同軍事演習を続けなければならない点に理解を示し、それは鄭特使から米トランプ大統領に伝えられた。

 3月20日、米韓連合軍司令部は合同野外起動訓練「フォール・イーグル」を4月1日から約1か月間実施することを発表したが、期間は例年の半分、原子力空母や戦略爆撃機などを公開する形で展開しないこととした。

休戦協定を平和協定に

 1950年に始まった朝鮮戦争は1953年休戦協定が調印され、今年で65年になる。朝鮮戦争はいまだ終わっていない。この間、1994年の米朝枠組み合意による核開発凍結、2005年の6か国協議による核放棄共同声明など、朝鮮半島非核化、和平プロセスが進行したが相互不信と挑発で頓挫(とんざ)した。

 1953年7月、朝鮮人民軍、中国人民志願軍、国連軍(米軍)各司令官が署名した休戦協定第60項には「休戦協定発効後3か月以内に政治会談を開催し、すべての外国軍の朝鮮半島からの撤退、朝鮮問題の平和的解決、その他の諸問題の交渉による解決」「敵対行為の禁止」が盛り込まれた。にもかかわらず、米国は韓国と「米韓相互防衛条約」を締結。協定に反して韓国に居座り続け、1990年代初頭まで千発を超える戦術核兵器を実戦配備していた。朝鮮戦争の終結、平和の回復を妨げてきたのは米国なのだ。

 その後、核兵器は撤去され、平時の指揮権こそ韓国に委譲されたが、有事の指揮権はなお米軍が握っている。1950年6月の安保理決議第83号と7月の84号により、「武力攻撃の撃退」を認められ統一指揮権、国連旗の使用権を付与されている米軍は、新たな決議がなくても「国連軍」の名の下でいつでも武力行使できる権限を持っているとされる。朝鮮が米国との交渉を重視するのは、米軍の不可侵保証が南北和解の前提だからだ。

 3月26日の中朝首脳会談で習主席は「今回の訪中は特殊な時期で意義は重大だ」と述べた。南北、米朝に先駆けて中朝首脳会談が行われた意義は極めて大きい。休戦協定は朝・中・国連(米)軍各司令官が署名したものであり、休戦協定を平和協定に切り替え朝鮮戦争を終結させるためには、協定当事国の中国と米国の同意が不可欠である。

 南北首脳会談と引き続く米朝首脳会談の成功は、朝鮮戦争の終結という「世界史的変化」(文在寅<ムンジェイン>大統領)につながる可能性がある。3月13〜15日に行われた韓国ギャラップの世論調査でも、文大統領の国政遂行に対する肯定的評価は74%に上り、世論も後押しする。後戻りはない。

日朝国交回復と植民地清算

 置き去りにされたのが安倍政権だ。あわてて4月の日米首脳会談の調整に走ったものの、新たに着任した杉山晋輔駐米大使は「北朝鮮が主要なテーマの一つになる」と言いつつ、「対話のための対話では意味がない」と従来の立場を繰り返すのみで新たな戦略を持ち合わせていないことをあらわにした。安倍の圧力一辺倒、戦争扇動路線の破たんは誰の目にも明らかだ。

 朝鮮半島南北分断は日本による植民地支配からの解放過程で生じた。朝鮮とは国交正常化も果たされていない。朝鮮半島非核化、平和の実現における日本政府の責任は重大だ。今こそ、日朝国交正常化、植民地清算をせまり、東アジアの戦争と軍事緊張を終結させなければならない。



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