2018年04月13日 1522号

【非国民がやってきた!(279) 土人の時代(30)】

 2018年1月27日、琉球大学で東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会の第11回シンポジウム「日本の植民地主義と中国・北朝鮮脅威論を問い直す!」が開催されました。シンポジウム前半では「植民地主義とヘイト・スピーチを考える」をテーマに、(1)前田朗「日本国憲法の植民地主義性」、(2)松島泰勝(龍谷大学)「琉球人の生死を貫く日帝植民地主義の問題性」、(3)島袋純(琉球大学)「琉球/沖縄に対する差別に抗して」の報告が行われました。18年1月28日の琉球新報は「『琉球人遺骨返還を』東アジア研究会が声明」と題して速報し、さらに2月6日の琉球新報は「シンポ・日本の植民地主義を問う 差別解消へ連帯を」と題して次のように詳報しました。

 「前田朗東京造形大学教授は日本国憲法に植民地主義が引き継がれていると指摘した。憲法に『レイシズムを克服する側面があるのは確かだが、レイシズムを助長する側面もある。大日本帝国憲法の戦争とファシズムの遺産が、清算されていない。戦後の最高裁は戦前の大審院の判例を引用してきた。日本の司法は戦前と戦後の間にほとんど断絶がない。憲法にもその側面がある』と述べた。」

 「松島泰勝龍谷大学教授は、琉球人遺骨返還問題について『琉球併合(琉球処分)後、行政などの上層部の大部分を日本人が専有した植民地体制下において、日本人研究者が骨を盗んだ。刑法でも犯罪だが、取り締まられなかったのは植民地だからだ』と指摘した。」

 「島袋純琉球大学教授は大阪府警機動隊員による『土人』発言に関連し、沖縄担当相の『差別と断定できない』との発言を政府が閣議決定で決めたことを『国家承認による差別だ』と述べた。・・・『もはや沖縄は沖縄戦前夜の状況だ。沖縄側の呼び掛けに反し、構造的差別を解消するための連帯が日本全体で広がらない状況では、戦争への道を止めることはできない』と警鐘を鳴らした。」

 琉球併合という植民地化に始まる構造的差別は、人類館事件、琉球人の墓暴き・遺骨窃盗、沖縄戦、昭和天皇の沖縄メッセージ、沖縄返還後の基地集中、そして現在の米軍基地問題にみごとにつながっています。遺骨返還どころか、質問や面会を拒否する京都大学の姿勢と、問答無用で沖縄に米軍基地を押しつける日本政府の姿勢は、同じ一つの根に由来します。

 シンポジウムでは、「琉球人・アイヌ遺骨返還問題にみる植民地主義に抗議する声明文 」(2018年1月27日、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会)を採択しました。声明は次のように述べます。

 「遺骨返還運動は先住民族の自己決定権行使、脱植民地化運動としても行われている。琉球人の遺骨は日本政府による琉球の植民地化過程で奪われたのであり、人間としての尊厳や権利が大きく損なわれた国際的な人権問題である。自らの遺骨を取り戻すことができるという先住民族の自己決定権を行使して、琉球人は1879年以降の植民地体制から脱却しようとしている。」

 「真理を究明して、これを社会に還元するのが大学の責務である。琉球人遺骨の盗骨は犯罪であるが、その事実に向き合わず、窃盗物を隠匿し続けることは共犯であると言える。琉球人遺骨の返還を求めるとともに、琉球人に対するこれまでの冒涜行為への謝罪を強く要求する。」

 「本研究会は昨年6月に札幌において第6回公開シンポジウム『反差別・反ヘイト・自己決定権を問う』、12月に京都において第10回公開シンポジウム『東アジアにおける琉球人遺骨返還問題』をそれぞれ開催し、琉球人とアイヌが直面する差別、植民地主義そして遺骨返還という自己決定権行使の可能性等について議論し、日本の植民地主義を批判した。」

 「我々研究会は琉球人・アイヌ遺骨返還に見る日本の植民地主義に強く抗議するとともに、同遺骨に関する完全な情報の公開そして遺骨返還、再埋葬を要求する。」

 植民地支配は、植民地分割で見たように植民地の大地そのものを分割します。植民地人民を植民地から切り離し、分断します。同様に、植民地人民を植民地体制に協力する者と協力しない者に分断します。最後に遺骨問題に見られるように、植民地に生きる者と死せる者を分断し、記憶と魂を分断するのです。
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