2018年04月20日 1523号

【働かせ方大改悪*@案閣議決定糾弾 うそ、ねつ造で過労死合法化 安倍政権もろとも葬り去ろう】

 安倍政権は4月6日、過労死水準の合法化を狙う残業時間「上限規制」、残業代ゼロ・働かせ放題の高度プロフェッショナル制度(高プロ制)、正規・非正規差別の温存助長などを一括で盛り込んだ「働き方改革」関連法案を閣議決定し、国会提出を強行した。決定を断固糾弾する。

 厚生労働省調査データで千件近くのねつ造やデタラメが明らかになり、裁量労働制拡大は一括法案から削除された。労働者の置かれた実態までねつ造する安倍や厚労省にそもそも法案の作成資格はないのである。

労働者総奴隷化だ

 法案は、どれも労働者にとって毒としか言えない。「働き方改革」ならぬ働かせ方大改悪で、労働者総奴隷化*@案の名こそふさわしい。

 法案は、時間外労働に「上限規制」を設け、最大でも年間720時間以内、月100時間未満などとすると言うが、真っ赤な嘘だ。労働基準法36条に基づく労使合意が必要な36(サブロク)協定上の労働時間には、法定休日労働が含まれないため、実質は毎月80時間、年間960時間の残業まで可能とされる。

 月100時間、2〜6か月平均80時間は現在の過労死認定基準だが、裁判では月63時間でも過労死認定された事例(ノキア過労死認定事件2011年大阪地裁判決)もある。法案で「上限」が制定されると基準の運用が厳格化され、認定が困難になりかねない。

 高プロ制が適用された労働者には、労基法の定める、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が一切適用されない。「高度専門業務」の内容も厚生労働省令で定めるとし、「成果型労働」と言いながら賃金制度の条文など1行も無い。残業代ゼロ、1年365日働かせ放題、まさに奴隷化法案だ。

 米国のホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制の適用除外)では、年収要件は260万円まで下げられた。今は標準労働者の3倍程度、年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発職など専門職対象というが、経団連は要件を400万円以上とすることを要望している。塩崎前厚労相も、経団連を前に「小さく生んで大きく育てる」と公言した。

 正社員と非正規労働者の「不合理な待遇の差を禁止する」もまったくのペテンだ。法案要綱は、派遣労働者の場合、派遣先の通常の労働者(正社員)で「業務の内容、当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ労働者と待遇を比較するとする。派遣社員と正社員がこのように同一となることなどそもそもありえない。正規・非正規の「同一待遇」とは、高く見積もっても、期限の定めは無いが職務や勤務地が限定され低賃金の「限定正社員」との同一にすぎず、結局、待遇は改善されない。差別の合法化、総非正規化推進が安倍の狙いだ。

過労死防止の規制こそ

 全国過労死を考える家族の会は「どんな職種でも、時間管理をなくしてはいけない。労働者に代わりはいても、家族に代わりはいないのだから」と、制度に強く反対する。高プロ制に該当する労働者の枠組みが今後拡大され、時間規制がない労働者が増えていくのではないか、という当然の懸念を過労死遺族は敏感に察知しているのだ。

 2013年に過労死したNHK記者、佐戸未和さんの母恵美子さんは、法案の閣議決定を聞いて「高プロ制で企業が労働時間の管理を免れることによって、労災認定が難しくなってしまう。企業の都合の良い『働かせ方改革』になっているのではないか」と憤った。両親が調べたところ、未和さんの時間外労働は亡くなる直前1か月では209時間に達していた。父親の守さんは「労働時間がきちんと管理されなければ、過労死につながる。過労死防止に直結する規制強化を先行して議論すべき」と訴える。

 共同通信社世論調査では、「働き方」関連法案について「今の国会で成立させる必要はない」との回答が69・1%に上る。世論もノーだ。

 「労働者総奴隷化」法案はただちに廃案にし、安倍政権もろとも葬り去ろう。

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