2018年05月04日・11日 1525号

【107人死亡の大事故から13年/命と安全を守る4・21集会/今、そこにある危機 分割民営化の矛盾が噴出】

 107人の死者を出したJR尼崎事故から13年。兵庫県尼崎市で「ノーモア尼崎事故!命と安全を守る4・21集会」(主催、同実行委員会)が開かれた。呼びかけ人の一人、「JRに安全と人権を! 株主・市民の会」桐生隆文さんに報告を寄せてもらった。

 4月21日、私たちは尼崎において「ノーモア尼崎事故!命と安全を守る集会」を開催した。

 2005年4月25日、107人の死者を出した尼崎事故からすでに13年が経過しようとしている。しかし、この事故で「業務上過失致死傷罪」により起訴された山崎元社長をはじめ、歴代3社長はすべて無罪判決が確定し、誰一人責任を取ることはなかった。

 集会では、「(事故後JR西日本の)現場においては、元の状態に戻るのに時間はかからなかった」と国労組合員から基調報告。「人員削減による非番日の居残り、『増収活動』強要、非正規職員の拡大、保線・電気職場の外注化など、際限のない合理化が進められた」。その結果として、昨年12月の「のぞみ34号台車亀裂事故」があった。「異常があったにもかかわらず、誰も止めなかった『安全よりも儲け優先』の会社姿勢が浮かび上がった」と告発した。

 続いて尼崎事故遺族の藤崎光子さんは「107人が死んでも誰も罰せられないのか。遺族の素朴な思いから欧米各国の法律を見ると、企業の罪、経営者・会社幹部の罪が当然のこととして規定されている。それに比べて、明治時代に制定された日本の刑法は直接携わった労働者の罪しか規定していない。大企業・大組織が動かす社会にふさわしくない、日本の遅れた部分であり、国民の司法への信頼を失わせている」。また、「業務上過失致死傷罪に(直接過失行為を行った従業員とともに)経営者・企業の罪を認める『両罰規定』を設置してほしいと『組織罰を実現する会』のもと活動している」と発言。その後、同日宝塚市で行われる「組織罰を実現する会」の集会に向かった。

北海道ローカル線問題

 「北海道ローカル線の切り捨てと安全の危機」と題して「鉄道安全問題研究会」の地脇聖孝さんが特別報告した。JR分割民営化の結果、JR北海道は構造的赤字の中、事故を多発させ2016年に宗谷本線をはじめ13区間について「単独では路線の維持が困難になった」と公表し、地域住民に衝撃が走った。

 同会は昨年国土交通省に対し、「道路、空港、港湾と同じように、鉄道線路の保有も地方交付税の算定対象にするよう」要請行動を行い、「これが導入されれば沿線市町村が線路を保有し、その維持費用を地方交付税で補てんする『日本型上下分離』方式が可能になる」との具体的な提案も。今、道内の学者グループを中心として「北海道の鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会」が発足し、北海道知事あてに「北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名」が50万筆を目標に開始されたと紹介した。

 そのほか、「リニア市民ネット大阪」より、JR東海の「リニア新幹線」建設について「エネルギー問題、残土問題、安全性と事故リスク問題」などを問う発言があった。

 国鉄分割民営化から31年。利潤追求最優先のJRが作り出した様々な危機や矛盾が浮き彫りになり、それに抗する人たちが結集する集会となった。会場に並べられた「組織罰を求める署名」「北海道の鉄道存続・再生道民署名」「リニア新幹線訴訟の公正審理要請署名」「JR片町線鴫野(しぎの)駅ホーム要員を求める署名」の4種類の署名がそのことを物語っている。

(「JRに安全と人権を!株主・市民の会」桐生隆文)

 
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