2018年05月04日・11日 1525号

【未来への責任(248)“圧力”ではなく植民地主義の清算を】

 4月27日に南北首脳会談が開催される。5月末から6月初めには歴史的な米朝首脳会談が予定されている。一人蚊帳の外に置かれた安倍首相は焦って訪米、トランプ大統領と会談した。結果はどうだったか。

 トランプ大統領は「(米朝会談で)拉致問題を取り上げる」と約束した。しかし、「拉致問題は安倍内閣の最重要、最優先の課題」であったはず。それをトランプ大統領に依頼するとは安倍首相の外交無能の証明でしかない。「拉致拉致と力む割には他人(ひと)任せ」(静岡県・櫻井恵里子=4/21『朝日川柳』)と揶揄(やゆ)される。

 肝心の核問題に関しても安倍首相は「相当突っ込んだ形で方針の綿密なすり合わせをした」とは言うが、トランプ大統領はすでにポンペオCIA長官を極秘に訪朝させ、金正恩(キムジョンウン)委員長と会談させていた。安倍首相との合同記者会見でトランプは「(金委員長との)会談が世界的な成功を収められるよう、できることは何でもする」と宣言。「我々は朝鮮半島が安全と繁栄、平和の中で共に生きる日を目にしたいと思っている」と述べ、「南北終戦の議論を祝福する」とも言った。南北、中朝、米朝の間で、朝鮮半島の非核化、平和体制構築に向けて協議は進展しつつあるのだ。確かに予断は許されない。米朝会談が先送りされる可能性も排除できない。しかし4月20日、朝鮮は核・ミサイル発射実験の停止、核実験場の廃止を決定した。歴史は動き始めている。

 「対話は無意味」と制裁・圧力一辺倒で来た安倍首相の対朝鮮政策は破綻した。安倍首相はこの期に及んでも「最大限の圧力の継続」を主張しているが、それは非核化交渉を阻害するものでしかない。

 朝鮮との関わりにおいて日本がやれること、やるべきことは他にあるではないか。それは過去、植民地主義の清算だ。

 2002年9月17日のピョンヤン宣言で、日本は「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」を表明した。そして、「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与する」ことを確認しあった。しかし、すでに1990年9月28日、自民党・社会党と朝鮮労働党の3党共同宣言は同様のことを確認していた―「過去に日本が36年間朝鮮人民に与えた大きな不幸と災難、戦後45年間朝鮮人民が受けた損失について、朝鮮民主主義人民共和国に対し、公式的に謝罪を行い十分に償うべきである」

 言葉だけではなくこれを具体的に履行すべき時である。日本がそのプロセスを踏み出した時に拉致問題を解決する道も開かれる。拉致問題は、トランプ大統領に依存せずとも日本の姿勢しだいで解決し得る課題だ。今こそ、日本の対朝鮮政策を転換させねばならない。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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