2018年05月04日・11日 1525号

【安倍政権打倒し、改憲阻止・東アジア平和構築/民主主義に貫かれた社会に変革】

 4月21、22日「安倍打倒・改憲阻止!MDS(民主主義的社会主義運動)集会」では佐藤和義MDS委員長、山川よしやす同副委員長が基調講演を行った。その抜粋を掲載する。

 安倍首相は追い詰められている。嘘、ねつ造が暴露され支持率が大幅に下落した。東アジアでは朝鮮半島和平の道から一人取り残され、あてにしたトランプ米大統領に鉄鋼・アルミについて追加関税をかけられることになった。官僚たちも安倍から逃げ出そうとして、情報をリークし始めた。この安倍政権に引導を渡し、新しい民主主義への道を作り出す時に来ている。

嘘と改ざんの政権

 森友疑惑で安倍首相は、2017年2月17日衆院予算委員会で「私や妻がかかわっていたのであれば、私は総理大臣も国会議員も辞める」と明確に答弁した。今年2月、財務省は森友学園への国有地売却についての決裁文書を国会に提出した。しかしこの文書は改ざんされていたものだった。

 自殺した近畿財務局職員は「決裁文書の調書の部分が詳しすぎると言われ上司に書き直させられた。勝手にやったのではなく財務省からの指示があった。このままでは自分ひとりの責任にされてしまう」「毎月百時間の残業が何か月も続いた」「常識が覆された」(3/13東京新聞)と書き残した。改ざんが一人の職員の命を奪った。

 加計学園疑惑は、安倍が国家戦略特区を用いて、友人・加計学園理事長加計孝太郎に便宜を図り、愛媛県今治市に獣医学部を建設するという問題だ。2015年4月13日、愛媛県、今治市の職員、加計学園幹部が柳瀬首相秘書官と会った際に「本件は首相案件となっており、内閣府の藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」との発言があったことが文書に記載されている【資料1】。まさに昨年6月、文部科学省で見つかった文書にあった「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」を裏付けるものだ。前川喜平前文科事務次官が言うように「首相秘書官というのは首相名代だ。誰にでも官邸で会うわけではない。当然のことながら、会う前には首相自身の指示、または了解があり、後には報告があったと思われる。17年1月に初めて知ったという首相発言は嘘だ。そのことを示す決定的文書だ」(4/29サンデー毎日)ということだ。



 安倍は何をしてきたのか。加計、森友は安倍の私的利益のためなのは明らかだが、その根底には安倍が進めてきた戦争と新自由主義路線がある。森友学園は教育勅語を暗唱させる「教育」を目的として設立されようとしていた。だから安倍、安倍昭恵、日本会議が推進したのだ。戦争をする国にしようとする安倍にとって森友学園は大切な事業であったのだ。

 加計学園は直接的には安倍の友人への便宜だが、根本的目的は規制緩和を進めるというグローバル資本への利益供与だ。ありとあらゆる場所で規制緩和を進め、最大の利益を得るために必死なグローバル資本に応えたものだ。

 元官僚で御用学者の高橋洋一は、加計問題を規制緩和問題だと主張した。

 例えば英語教育に参入している楽天は、三木谷浩史会長・社長が文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」に参加し、小学校英語教育の早期化、教科化、大学入試英語への民間試験導入などを進めてきた。その楽天系列社員が文科省に出向し英語教育の企画立案を担当し、楽天は事業化した。規制改革会議議長として安倍が利益誘導したことと同じことをしている(4/17赤旗)。

日報隠ぺいとデータねつ造

 2017年2月20日、衆院予算委員会で稲田朋美防衛相(当時)が「(日報は)確認したが、見つけることはできなかった」と答弁していたが、18年4月2日、小野寺五典防衛相は「全省的に調べる中、新たに発見された」とイラク日報の存在を明らかにした。

 イラク日報435日分15000ページが明らかとなったが、その中で「戦闘」との表現が少なくとも6か所記載されていた。いくつか引用する。【資料2】

 【資料2】イラク日報の戦闘表現

 2006年1月22日「サマワでサドル派の事務所前にイギリス軍の車両が停止しパトロールを始めたため、サドル派は射撃し戦闘が拡大した」
2005年10月10日「床屋で散髪をしたところ、髪が変色して抜け始めた。医務室からは『爆弾攻撃を受けたあと、コンバットストレスのため髪が抜けるなどの症状が出ている』との回答があった」

 これは自衛隊海外派遣と憲法との矛盾をごまかすために、非戦闘地域への派遣とした小泉首相(当時)の答弁との整合性を保つために隠されたとみるべきだ。しかし、公開されたものは2004年1月から06年9月までの45%に過ぎず、04年10月22日、サマワ宿営地にロケット弾が着弾した日の日報は出されていない。さらに危険な戦闘状態にあったことが隠ぺいされていた。

 イラクも南スーダンもすべて自衛隊海外派兵を進めるためにごまかしてきたことが暴露され、海外派兵に支障をきたさぬよう自衛隊も安倍政権も日報を隠ぺいしてきたのだ。現実に過酷なイラクや南スーダン派兵の下で自衛隊員の自殺、あるいはPTSD(心的外傷後ストレス障害)も続発している。海外派兵を推進してきたグローバル資本とその政権がもたらしたことだ。隊員がどうなろうとも海外派兵の継続のためには、情報を隠ぺいするのだ。



 「働き方改革」を進めるとする厚労省は労働時間データをねつ造し、野村不動産社員の過労自殺を隠ぺいした。安倍首相は1月29日、「裁量労働制の方が一般労働者より労働時間が短い」と主張したが、これはねつ造データに基づくものだった。このことが明らかになり安倍首相は2月14日答弁を撤回、法案から裁量労働制を削除した。

 野村不動産への動きはこれと前後して推移した。昨年末、東京労働局が野村不動産に対し、裁量労働制を違法に適用しているとして特別指導を行ったと発表した。裁量労働制の乱用をしっかり取り締まっていることをアピールするためだ。だがその指導は、社員の過労自殺を発端とすることが3月4日に明らかになった。すると厚労省は東京労働局が公表していた是正勧告の事実を認めなくなった。いつ過労自殺を知ったかを追及されたくないからだ。「過労自殺がなくても企業を監視していた」というストーリーを維持したいためだ。

 厚労省の「働き方改革」はグローバル資本の意思に応えて労働者を徹底的に働かせ、搾取を強化しようとするものだ。どう見ても労働者の利益にまったくならないものを「働き方改革」というためには、ねつ造しかなかったのだ。

 総じて安倍の戦争と新自由主義路線は市民・労働者には利益が一切なく、1%の支配階級のみに利益が回る政策だ。それを実行するためにはウソ、ねつ造何でもありというのが安倍政権であり、そのような手法が破たんしたのである。

自衛隊幹部 議員に暴言

 これらの改ざん、隠ぺいを進めてきた官僚の腐敗があちこちで暴露されてきている。1%の利益のためなら何をしてもいいという安倍政権下で、内閣人事局が官僚人事を決め、官僚の腐敗が進行した。

 森友で改ざんを行った財務省の福田淳一財務事務次官は、女性記者にセクハラ発言をしていたことが明らかとなった。

 官僚の思い上がり、腐敗はそれだけでない。経産省出身の佐伯耕三首相秘書官は衆院予算委員会で「違うよ」とヤジを飛ばした。官僚が国会議員に対してヤジを飛ばすとは思い上がりもいいところだ。国会を無視し、不誠実な答弁を繰り返す安倍の態度を見習っているのだ。

 また東京労働局長は記者に対し3月30日、「何なら、皆さんの会社に行って是正勧告してもいいんだけど」と、恫喝する。彼もまた新聞記者よりは自分が上であるという思い上がった態度が明白だ。

 官僚たちの思い上がり、人権否定は安倍内閣の戦争、新自由主義路線がもたらしたものだ。国会の多数を握り官僚の人事権を持つ安倍政権。その中枢を担う今井尚哉首相秘書官をはじめとする官僚が思い上がるのは当然だろう。

 しかもさらに危険な事態が発生した。4月16日夜、防衛省統合幕僚監部に勤務する3等空佐が永田町の路上で民進党小西洋之参院議員に対し、「お前は国民の敵だ」との暴言を吐いたのだ。実力組織防衛省の幹部が選挙で選ばれた国会議員に暴言を吐くことは許されない。

 戦前のファシストが軍部に反対する者を国賊呼ばわりし、わずかばかりの民主主義をも封殺していった歴史を思い起こさねばならない。軍人が国会議員を「国民の敵」とののしる恐ろしさ。戦争法、海外派兵、そして改憲策動はこのような軍人を生み出している。

 これら官僚や軍人の言動は彼ら個人の性格の問題ではない。安倍や麻生の言動も個人の性格の問題ではない(もちろん、安倍、麻生の性格はかなり悪い)。1%のグローバル資本、支配階級の利益のためには何をしてもいいのだという思想が根底にあるからだ。福田はなぜ女性記者の人権を無視した言動を繰り返したのか。麻生はなぜ擁護したのか。安倍は友人の利益を図ってなぜ平気なのか。

 彼らは1%の利益のために生活保護を削減し、生活保護受給者の生活を困難にした。彼らは介護予算を抑制するため介護サービスを切り捨てようとしている。彼らはただでさえ長時間労働で苦しむ労働者に対し、残業代を払わず、働かせ放題にしようとしている。他方で軍事費を増額し、イージス艦、オスプレイ、F35を調達し、さらなる侵略兵器を手に入れようとしている。原発輸出のために国家資金で保証しようとしている。沖縄県民の意思を無視して辺野古新基地建設、南西諸島への自衛隊配備を進めている。

 ここにあるのは人権破壊、反民主主義の思想だ。同じ思想を持つ支配階級が寄ってたかって日本の民主主義を破壊している。したがって安倍内閣打倒の闘いは、日本に改めて民主主義をつくりだす闘いなのである。

改憲策動を継続

 安倍は追い詰められても改憲策動をやめてはいない。3月25日、自民党大会のあいさつで「憲法にしっかりとわが国の独立を守り、平和を守り、国と国民を守る。そして自衛隊を明記し、この状況に終止符を打ち、そして違憲論争に終止符を打とうではありませんか。これこそが私たち、今を生きる政治家の、そして自民党の責務であります。敢然とこの使命を果たし、新しい時代を皆さんつくりあげていこうではありませんか」と改憲をあおっている。

 自民党大会で報告された自民党改憲4項目は、「自衛隊の根拠規定の明示」「緊急事態対応」「参院選の合区解消」「教育の充実」である。焦点の9条改憲案は9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むというものであった【資料3】。

 【資料3】自民党改憲案のたたき台

9条の2

1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

 この9条改憲案について安倍首相は「現状を追認するだけで何も変わらない」という。しかし、現在の自衛隊は戦争法の下、集団的自衛権行使をすることになっている。2項が維持されても9条の2で現在の自衛隊が認められると9条は死文化することになる。また緊急事態条項は基本的人権を破壊するような政令を出すことができるようにするものであり認めるわけにはいかない。教育、合区解消は憲法ではなく法律で行うことだ。

 しかし安倍首相が改憲をあおっても、経団連会長にすら「国民の政治に対する信頼感が揺らいでいるときに憲法の話はそぐわない」(3/27朝日)と言われる始末だ。野党各党は「憲法審査会開くな」で一致している。安倍がいかにあおろうとも、安倍打倒闘争の盛り上がりで改憲発議は阻止できる。

どのように安倍を倒すか

 安倍政権は息も絶え絶えだ。小泉元首相までもが「危なくなってきたね。安倍さんは引き際、今国会が終わる頃(6月20日)じゃないか。(9月の)総裁選で3選はないね。これだけ森友、加計問題に深入りしちゃったんだから」(4/27週刊朝日)と述べる。内閣支持率は最低のNNN調査では3割を切った。朝日新聞調査でも31%にまで下がった【資料4】。



 この安倍を最終的にやめさせるのは民主主義運動の力でなければならない。今日のアジア情勢を規定しているのは文在寅(ムンジェイン)大統領を実現した韓国ろうそく革命の力だった。この力がグローバル資本の戦争への動きを封じ、朝韓、朝米会談を実現させつつある。2016年10月から17年3月までの5か月間で韓国のキャンドル集会への延べ参加者数は1658万人にのぼった。

 日本の安倍打倒闘争は4月14日国会前で5万人の集会を実現したが、安倍を打倒し社会を根底から変えるにはまだまだ不足している。石破茂とか小泉進次郎ではなく民主主義を実現する政府をめざさなければならない。そのためには国会前と結んで、全国全地域で安倍打倒集会、デモなどの行動を展開すること、安倍改憲NO!3000万人署名を強め、改憲阻止の世論を大きくつくり出すことだ。署名を手に全戸訪問を行い、市民の意識を変革することだ。

 安倍を打倒し改憲戦争路線に終止符を打つためにはアジアにおける平和を積極的に打ち立てなければならない。アジアにおける軍縮を実現し、非核化を実現しなければならない。韓国民衆運動に学び連帯しなければならない。

 安倍政権はこの期に及んでも「働き方改革」法を進め、辺野古新基地建設を進め、改憲論議を起こそうとしている。闘いの力で安倍を打倒し、平和なアジアをつくり出そう。民主主義を貫く社会にするのは、市民の闘いの力である。



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