2018年05月18日 1526号

【「自衛隊明記改憲」の賛否/結果が分かれた世論調査/読売の露骨な「賛成」誘導】

 「これって、どちらが本当なの」。読者は大いに戸惑ったことだろう。安倍首相が狙う自衛隊明記改憲への賛否を世論調査したところ、朝日新聞と読売新聞とでは結果がまるで違っていたのである。

 朝日新聞の世論調査(3月下旬〜4月上旬に郵送で実施)によると、安倍首相の9条改憲案に「反対」が53%、「賛成」は39%であった。安倍政権のもとでの改憲については「反対」58%が「賛成」30%を上回った。これらの結果を受け、「朝日」は「首相案への支持は広がらなかった」(5/4社説)と論じている。

 一方、読売新聞は同社の世論調査結果を「自衛隊明記『賛成』55%/9条改憲案 自民手応え」と大きく報じた(4/30)。「反対」は42%だった。同じ郵送方式の調査で実施時期もほとんど同じ。こんなに違う結果が出るのはどうしてなのか。答えは皆さんのご想像どおり。質問文が大きく異なっているのである。

 「朝日」は「安倍首相は、憲法9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。こうした9条の改正に賛成ですか。反対ですか」と聞いている。安倍首相の案であることを強調した質問なので、首相への不信感が結果に影響したと思われる。

 「読売」はどうか。こちらは「憲法第9条について、戦争の放棄や戦力を持たないことなどを定めた今の条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加することに、賛成ですか、反対ですか」という質問文だった。戦争放棄や戦力不保持は不変と念を押して聞いている。なるほど、賛成が多く出るわけだ。

 「読売」は賛成多数という結果を導きたかったのだろうが、質問でインチキをしてはいけない。安倍改憲で現行9条の基本理念は変わらないなんて大ウソだ。

 自民党は3月の党大会で、9条2項の後に「前条の規定は、自衛の措置をとることを妨げるものではない」として、自衛隊を明記する条文案をまとめた。「自衛の措置」には、安倍政権が閣議決定で認めた集団的自衛権の行使が含まれる。

 つまり、連中は「戦力不保持」や「交戦権の否定」を定めた9条2項の制約を取り払い、集団的自衛権の行使を口実としたグローバル派兵を可能にしようとしているのである。これが憲法9条の死文化でなくて何であろう。
 こうした事実をメディアはあまり取り上げない。御用新聞筆頭の読売新聞に至っては完全にスルーしている。憲法をめぐるメディアの世論調査をみるときは、隠された世論誘導の意図に十分注意しなければならない。       (O)

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