2018年05月25日 1527号

【福島原発刑事訴訟第11回公判 地震学会元会長「対策とれば事故は防げた」 学者の良心の声 涙ぐむ傍聴席】

 業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3人の第11回公判が5月11日、東京地裁であった。日本地震学会の元会長で政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の部会長を務めていた島崎邦彦・東京大学名誉教授が出廷。「(地震本部が02年に公表した巨大津波地震予測の)長期評価に基づいて対策をとっていれば、原発事故は起きなかった」と証言した。

 公判後の記者会見で、被害者参加代理人の海渡雄一弁護士は「島崎さんは長期評価部会長として、専門家の間に意見の違いがある中、どんな苦労を重ねながら異論のない形で長期評価をまとめ上げていったのか詳しく説明された。非常に説得力のある尋問だった」と高く評価。大河陽子弁護士は「(震災直前の11年3月9日に予定していた長期評価改訂版の公表を、地震本部事務局の要請を受け延期したことについて)きちんと公表していれば多くの命が助かっただろう、と言葉を詰まらせながら後悔の念を語られた。こうした証言をする動機も伝わってきて、証言全体の信用性を高めた」と述べた。

 福島原発刑事訴訟支援団の佐藤和良団長は「私自身も涙ぐむ場面があった。日本の学者の良心の声を聞いた。被害者にとっては一つのともしびになる」と話し、被告弁護人側の反対尋問が行われる次回5月29日の公判への結集を呼びかけた。
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