2018年06月01日 1528号

【「避難の権利」相当の土壌汚染/尿中セシウムもチェルノブイリに匹敵/南相馬 避難20_Sv訴訟報告集会から】

 放射能被ばくの問題を正面に据えた「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟」。4月26日の第11回口頭弁論後、土壌汚染と尿中セシウムに関する貴重な報告が行われた。

 「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」は、昨年避難指示が解除された地域にも依然としてチェルノブイリ法の避難基準に相当する土壌汚染がある実態を明らかにした。

 浪江町では昨年315ポイントで調査し、平均20万〜60万Bq/uが28%、60万Bq/u以上が54%。富岡町では432ポイントで調査し、20万〜60万Bq/uが49%、60万Bq/u以上が37%。両町とも町の約8割がチェルノブイリ法の「避難の権利」「避難の義務」ゾーンに相当した。

 もともと避難区域外とされた南相馬市原町区は、昨年12月の69ポイント調査で平均21・9万Bq/u。全域が「避難の権利」ゾーンに当たる。山間の片倉地区は今年3月、58ポイントで平均30万Bq/u超。健康に十分注意して生活しなければならないレベルだ。

 1月、原町区の原告宅の空間線量を計測した。玄関先が0・39μSv/時、屋内の2階で0・48μSv/時と屋外より屋内が高い結果が出た。他の原告宅6棟でも同様だった。環境省は年1_Svを、“1日を屋外で8時間、屋内で16時間滞在。屋内の被ばく影響は屋外の40%”とみなし、自然放射線分を加えて0・23μSv/時に換算する。この計算式に妥当性がないことを、実測結果が示した。

 2011年5月から尿中セシウム検査を続ける「ちくりん舎」は、内部被ばくを減衰させる保養の大切さを強調した。ちくりん舎は発足以来700人の検査を実施。「ホールボディーカウンターは身体全体で100〜250Bq以上でないと不検出となるため、その約100分の1の検出限界値である尿検査にこだわった」という。

 原町区に住むAさん(70歳女性)から15年3月、0・22Bq/`cのセシウム137が検出された。17年6月には0・13Bq/`cに下がったが、同月から8月まで保養のため島根県に滞在すると、わずか50日間で0・085Bq/`cまで激減。しかし、保養から戻った今年2月は0・068Bq/`cと、下がり方は以前のペースに戻った。「保養先では食品からの放射性セシウムの追加摂取がなかったこと、ストレス解消により代謝がよくなったことが影響しているだろう。戻ってから減衰率が鈍くなっており、空気中の粉塵などによる呼吸器からの取り込みが心配される」


放射性被ばくは明らか

 16年1月から18年3月まで、南相馬市37人と他地域188人の尿検査を実施。南相馬市は検出率86%で、南相馬以外の福島県内は55%、栃木63%、茨城67%と高かった。京都市や埼玉県は0%。東京22%、千葉30%と、検査数は少ないながら傾向は表れている。

 山内知也神戸大学大学院教授のコメントが紹介された。「チェルノブイリ事故から15年後、強制避難地域ではなかったウクライナで事故前の1・65倍の膀胱がんが発生した。患者の尿中セシウムは1・23±1・01Bq/g。膀胱炎から膀胱がんに移行している。膀胱炎は非汚染地区では見られなかったので、放射性被ばくに関係していることは明らか。比較して南相馬市の方がたの濃度は格段に低いとは言えない」
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