2018年06月01日 1528号

【南北分断の元凶は植民地支配 対話で過去清算、国交正常化を 朝鮮半島、東アジアの平和へ】

 朝鮮半島の平和へ一歩一歩対話が進む中、安倍政権だけがその流れに逆らい孤立を深めている。だが本来は、植民地支配によって南北分断に大きな責任のある日本政府こそが過去清算、日朝国交回復から東アジアの平和、非核化の道に力をつくすべきだ。あらためて歴史を振り返り、日本の役割を考える。

植民地支配の罪

 明治時代以降の日本の近代史は、「殖産興業」「富国強兵」の名で産業近代化と植民地分割競争に参入するために軍事体制整備を進め、朝鮮の植民地支配から中国大陸侵略へと突き進んで1945年のアジア太平洋戦争敗北に至る歴史であった。

 日清・日露戦争は、朝鮮半島の権益をめぐって清国やロシアと闘うことで朝鮮半島での利権を確保し、1910年韓国併合で完成する植民地支配を確かなものとした。日本は朝鮮を植民地支配下に置いて収奪するとともに3・1運動などの独立抵抗運動を徹底的に弾圧し、太平洋戦争末期には80万人に及ぶ朝鮮人を強制連行・強制労働させ多くの犠牲者を生み出した。

日本の身代わりで分断

 第2次世界大戦後の日本の処遇について1943年11月に出されたカイロ宣言は「日本国は暴力及び貧慾(どんよく)により日本国の略取したる他の一切の地域より駆逐」されるべきとして日本が侵略によって獲得した全領土の放棄とともに「三大国(アメリカ・イギリス・中国)は朝鮮の人民の奴隷状態に留意しやがて朝鮮を自由かつ独立のものたらしむるの決意を有す」と朝鮮半島の日本の植民地支配からの解放を明記した。

 1945年8月、カイロ宣言を踏まえたポツダム宣言受諾により日本の朝鮮植民地支配とアジア侵略の歴史に終止符が打たれた。カイロ宣言の意義は、「奴隷状態」におかれた朝鮮を日本の植民地支配から解放することを宣言した点にある。2度の世界大戦の反省から戦争の抑止・防止のためにも基本的人権の確立や人種差別の根絶が不可欠との認識で国連憲章や世界人権宣言が作られ、「非植民地化宣言」「人種差別撤廃条約」を経て、植民地主義・人種主義の克服をうたう2001年ダーバン宣言に結実する。カイロ宣言はその先駆けだ。日本の敗戦で、朝鮮は解放され独立を手にするべきであった。

 太平洋戦争末期、戦後の日本の占領統治については連合国による分割統治案やソ連の北海道占領計画の動きもある中で1945年8月9日、ソ連が日本に宣戦布告し満州から朝鮮半島北部への進攻を開始。その影響力を抑えようとした米国は、ソ連に占領の境界を朝鮮半島の北緯38度線に設けることを提案しソ連も了承した。当時、朝鮮半島北部を管轄していた日本の関東軍は対ソ作戦に、南部を管轄していた第17方面軍は対米作戦に当たることとされていた。関東軍がソ連に武装解除され、第17方面軍はアメリカに武装解除された。つまり日本の武装解除のための米ソの占領の境界線として朝鮮半島の38度線が定められたことになる。日本本土は分割されることなく米軍単独占領となった。

 カイロ宣言の先進的内容は米ソ対立の下で朝鮮については実質否定された。日本は自ら起こした侵略戦争の結果、分割統治の可能性もあったが、その「身代わり」として朝鮮半島が分断されたといっても言いすぎではない。

 以降、戦後日本は朝鮮戦争の後方基地の役割を担い、戦争「特需」で後の高度経済成長の基礎をつくった。植民地支配の責任を清算することなく朝鮮半島分断の犠牲の上に「繁栄」を築いたのである。

  

戦争責任と向き合う

 戦後日本は、侵略戦争責任と向き合い、被害を受けた民衆への謝罪と完全賠償を行うべきだった。ところが、1965年の日韓条約では、日本は植民地支配の責任を認めず謝罪抜きの「経済協力方式」で韓国と国交を回復した。

 朝鮮民主主義人民共和国との間も、2002年ピョンヤン宣言で「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」を表明。だが、日本政府は韓国同様「経済協力方式」とし、さらに拉致・核問題を口実に国交交渉の道を閉ざした。

 国家間の経済的賠償だけでは問題は解決されず、植民地支配の直接の被害者である元日本軍「慰安婦」や強制連行被害者の人権回復がされない限り真の解決にはならない。

 安倍政権は、南北対話の劇的な進展にもかかわらず、なお「圧力」と軍拡・戦争路線に執着し、日朝国交回復への努力も拒む。どれほど異常な姿か。歴史に逆行する安倍に引導をわたし、東アジアの平和、非核化へ対話と交渉の道を開かなければならない。そして、日本の植民地支配の暴力によって傷ついた被害者への謝罪や補償など過去清算を政府に行わせることは日本民衆自身の課題である。

 
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