2018年06月01日 1528号

【区域外避難者の住宅問題/第2回政府・福島県交渉/県は入居期間の延長を】

 国家公務員宿舎に住む原発事故区域外避難者の間では、家賃値上げや来年限りの追い出し通告を前に、転居のめどが立たないまま不安だけが広がっている。5月17日衆院第2議員会館で、区域外避難者の住宅無償提供打ち切り問題をめぐる避難の協同センターと子ども・被災者支援議員連盟共催の第2回政府・福島県ヒアリングが行われた。

 立憲民主党や共産党、社民党などの国会議員と20人近い避難者が出席し、財務省・復興庁・国土交通省、福島県の職員とやり取りした。

 ポイントは、継続入居延長の課題を福島県と国の協議のテーブルに乗せること。前回(4月19日)、延長について財務省は「福島県から具体的な意向が示されれば丁寧に対応したい」と回答している。そこで、県に延長の検討について問うたが、「来年3月までに入居者の自立再建をめざしたい。延長は考えていない」との回答を繰り返した。

 延長2年間の判断は、県が希望的観測で決めたもので、入居者実態調査による裏付けや「自立再建」のめどがあって期限を区切ったわけではない。進行役の山崎誠議員(立憲民主党)は「行き場の見つからないまま3月になって、さあ強制退去か。居続けると契約書にあるように倍の家賃をとることになるのか。ならないだろう。早急に対応しなければという危機意識がないのではないか」と迫る。現在戸別訪問は見合わせている県は「個々の実態をつかむため再開したい」との意向を表明。しかし、山崎議員は「退去を促す訪問は問題。期間の延長や住宅確保のために最後まで面倒を見るという訪問でないとだめだ」と反論した。

行き場失う避難者出すな

 延長を躊躇(ちゅうちょ)する県に理由を尋ねると、「支援策に基づいてすでに再建した人もいる。そことの公平性を考えて」。会場はざわめいた。新たな支援策の提起は特別扱いとなり公平性を欠く、というわけだ。避難者の長谷川克己さんは「行政の世話にならなくてもなんとか自分たちで生活できるようになった。その私たちを引き合いに出し、『公平性』を語られるのは心外。様々な条件で見通しが立たない避難者もいる。その方たちを救済するのは公平性を損なうこととは違う」と怒った。

 山崎議員は「公営住宅への入居や新たな施策を検討しないことには、行き場を失う避難者が出る。行政の皆さんと一緒に知恵を出し合って、何とかしていこう。県は次回までに、入居期間の延長や民間家賃補助の継続などを検討してみてほしい」とまとめた。

 ヒアリング後、国交省職員に「公営住宅の優先入居要件に『避難者』の項目を加え、世帯要件など問わない方法はできないか」と尋ねたところ、「国から指示するものではなく、都の判断で可能。都民も避難者に理解があるだろうから、優先入居を運用するやり方はあると思うのだが」と答えた。「避難者が家賃を直接国に払う仕組みになっていない。県が家賃を徴収せず肩代わりして支払う方法もあるはずだが」との質問に、財務省職員は「交付金なりを利用して県が負担することについて国はとやかく言わない」。福島県の方針が問われる。

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