2018年06月01日 1528号

【みる…よむ…サナテレビ(485)/2018年5月12日配信 イラク平和テレビ局in Japan/イラクの若者には居場所がない】

 イラクは今、子どもの人口が増え続け、若者も多い。しかし、現在のイラク社会は若者の願いや希望に応える状態ではない。学校を卒業しても就職が難しく、失業率は高いままだ。2018年3月、サナテレビは、若者を取り巻く社会状況について、若者自身に意見を聞いた。

 インタビューの最初に登場する青年は「社会の中で若者が生きやすい社会≠ニいった考えがなくなってきている」と批判する。自らは地域の若者の活動に積極的に参加している。「私がイラクだ。私が読む」と題したフェスティバルに2012年から取り組んできたという。

 この青年の経験からすると、若者が社会的な活動に参加するのに最も必要なのは地域社会に貢献する∴モ欲だ。「自分からやりたいという気持ちさえあれば、若者はどんどんと積極的に活動していく。逆に、若者の考えや気持ちを否定してしまっては、何の積極性も生まれない」。何年間も若者に働きかけてきた人ならではの感覚だ。

 2人目はボランティアチームの男性だ。「若者にやる気を起こすようなことを何もしていないイラク政府こそが、若者に居場所がない社会にしている一番の原因だ」と指摘。男性は「若者は本当は大きなエネルギーを持っている」と主張する。インタビューの翌日には「太陽光エネルギー」のフェスティバルを開くということだ。

 3番目に語る失業中の青年は「結婚して家族や車を持つといった小さな夢でさえ、政府は若者に保障していない」と訴える。2003年の占領以後、グローバル資本によって意図的に大量失業が作り出されてきた。それに苦しんできた当人であるだけに、訴えは切実だ。「国は若者を裏切り、イラク社会もまた若者を裏切っています。何の権利もないし、何の自由もありません」というのが今日の若者が置かれた状況だ。

 若者が希望を持てない大きな原因は、汚職まみれの政府が若者の雇用をつくらず、社会をともに築いていく機会をまったく提供していないことにある。サナテレビは、こうした事態を嘆くのではなく、厳しい現実に直面しながらも立ち向かっている若者の意見を紹介し、イラク社会を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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