2018年06月08日 1529号

【戦争終結への対話で東アジア平和を/民衆の力で米朝会談開催へ/トランプの「中止表明」】

対話は実現できる

 5月24日、トランプ米大統領は6月12日に予定していた米朝首脳会談の開催中止を表明した。その理由を、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長あて書簡では「北朝鮮側の直近の声明にあった激しい憤りとむき出しの敵意」から、とする。

 しかし、トランプは同書簡で、首脳会談開催に向けて金委員長が払った努力や人質解放に謝意を表した。また「対話こそが大事」「この最も重要な会談をしようと思うなら、遠慮なく私に電話するか、手紙を書いてほしい」とも述べる。対する朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金桂寛(キムゲグァン)第一外務次官も「(トランプ大統領の)首脳対面の勇断、その努力を高く評価してきた」とし、「いつでも、いかなる方式であれ対座して問題を解決する用意がある」と結んだ。

 希望は失われていない。米朝首脳会談、直接対話こそが朝鮮半島非核化の現実的前進を切り開く。両首脳は「対話」「対座」の意義を認め、会談開催の意思も表明している。26日には急きょ2度目の南北首脳会談が開かれ、トランプも同日「6月12日の予定は変えてない」と述べた。国際世論も、米国や韓国の平和団体・市民団体も開催実現を求めている。平和を求める民衆の力で首脳会談開催と和平への内実ある合意を迫ろう。

2つの戦争を終結

 4月27日の南北首脳会談と板門店宣言は、朝鮮半島非核化と朝鮮半島の平和体制確立に向けた展望を切り開いた。この展望は米朝首脳会談を経てこそ現実化していく。米朝首脳会談のもつ歴史的意義を改めて確認しよう。

 第一に、朝鮮半島に残る2つの戦争を完全に終わらせることだ。2つの戦争とは、朝鮮戦争と「冷戦」。

 1950年に始まった朝鮮戦争は、1953年7月に米朝中の間で結んだ休戦協定で停戦状態となった。しかし、平和協定が結ばれないまま65年が経過。戦争はいまだ終わっていない。板門店宣言は、「今年に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換」することを確認した。だが、その実現には、米国の「終戦」同意=平和協定締結が不可欠だ。米朝首脳会談こそがそのプロセスを進める。

 朝鮮戦争が終結した時、東アジアに残った冷戦体制も解体される。社会主義体制の崩壊と冷戦の「終結」により、1991年、南北朝鮮は国連に同時加盟した。韓国は旧ソ連、中国とも国交を結んだ。一方、米国、日本は朝鮮との国交正常化を拒み、朝鮮は孤立を強いられた。こうした不正常な状態が、軍事的緊張・対立と朝鮮の核開発「衝動」の根底にある。朝鮮戦争を終わらせ、米朝さらに日朝国交正常化が実現するならば、冷戦は最終的に終わる。

 第二に、この2つの戦争の終結は、朝鮮半島と北東アジアの非核化と軍縮進展の展望をつくりだす。4月27日南北首脳会談で、金委員長は「米国と信頼が築かれ、終戦と不可侵を約束されれば、果たして私たちが核を持って困難を強いられる理由があるだろうか」と言った。朝鮮が核開発に執着する理由・根拠を解消していくことが「完全な非核化」を実現する最短・最良の道であることは明白だ。

 さらに、朝鮮戦争終結は、韓国、日本国内の「国連軍」基地、司令部の撤去を導く。マティス米国防長官は、平和協定が締結された時には在韓米軍削減が「同盟国との協議対象になる」(4/27)と述べている。在韓米軍の整理・縮小に結びつく可能性は十分ある。それは沖縄をはじめ在日米軍基地の存在意義を問い直し、縮小・撤去を現実的課題としていくに違いない。

 朝鮮半島非核化実現は、南アフリカ、ウクライナ、リビアの核廃棄の時とは比較にならないほど、核廃絶、軍縮の歴史に新たなページを開く意義を持つ。

和平を嫌悪する安倍

 トランプの米朝会談中止表明に対し、南北朝鮮はもちろん、英仏ロ中首脳も遺憾の意を表し、会談開催を促した。ところが、日本政府・安倍だけは「(中止の判断を)尊重し、支持する」と表明。菅官房長官は「重要なことは会談の開催自体ではない」と言い放った。どれほど異様か。

 日本は、朝鮮戦争の特需で経済「復興」を進め、冷戦激化により、戦争賠償、植民地支配の清算を免れてきた。その延長上に、安倍政権は拉致問題を利用して反朝鮮感情をあおり、核・ミサイル開発を口実に戦争法制定、軍事力強化と憲法改悪を進めている。

 朝鮮戦争、冷戦を利用し続けてきた恥ずべき歴史を今こそ清算させなければならない。米朝会談成功―朝鮮戦争終結―米朝国交正常化は、対話を嫌悪し東アジアの平和を妨げる安倍政権の好戦性を浮かび上がらせる。軍拡、基地建設・強化に反対する民衆連帯で、安倍もろとも改憲―戦争路線を葬り去ろう。日朝国交回復を迫り、東アジアの平和を市民の力で築き上げよう。



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