2018年06月15日 1530号

【経産省前テントひろば トリチウム汚染水対策をただす 資源エネルギー庁ヒアリング】

 福島第一原発トリチウム汚染水の現状と対策をめぐる資源エネルギー庁へのヒアリングが6月1日、経産省前テントひろばの呼びかけで行われた。進行役は渕上太郎代表。

薄めて放出の動き

 エネ庁は2016年11月、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」を立ち上げた。しかし、今年2月の会議の議題が「風評被害対策」となっているように、健康被害への予防原則に基づく議論ではなく、安全論に立ったリスクコミュニケーションへとシフトしている。回答は、トリチウム汚染水は低線量で健康影響は他のリスクを考慮に入れれば小さなもの、との見解に貫かれた。

 第一原発の敷地内では、約850基のタンクに計106万トンの汚染水が保管されている。セシウムやストロンチウムは除去できてもトリチウムは分離できない。原子力建屋には約5万5千トンの高濃度汚染水が溜まっており、雨水・地下水も流れ込むため毎日約100トンの新たな汚染水が発生する。そこで、基準以下の濃度に薄めて海洋に放出する動きが強まっている。

 トリチウム水を人体に取り込むとDNAを構成する水素と置き換わり、ベータ線を放出して遺伝子を長期にわたり傷つける。内部被曝について問うと、エネ庁職員は「影響がないことはないというのは指摘通りだが、度合いは低い」。

 健康被害の質問では、玄海原発周辺での白血病多発に「因果関係はないと見ている。トリチウム水が原因との証明はなされていない」。カナダのピッカリング原発周辺の新生児死亡率については、1991年のカナダ原子力管理委員会レポートを引用して「統計的に有意な相関関係はないと報告されている」。様々な被害研究があることをどう見るか、に対しては「私たちも様々な報告から、そこではこう言われているという形で述べている。ICRP(国際放射線防護委員会)の研究を信頼している」。

海洋投棄するな

 渕上さんは「海洋投棄せずに、安全性が確認できるまで長期保管すべき。周辺地域にタンクを設置するとも聞く」と主張した。トリチウムの半減期は12年3か月。新たな技術開発、自然低減を待つという安全性優先の提案だ。エネ庁職員は「汚染水を敷地外には出さない、事故の影響を広げたくない立場。一方、敷地内のタンクは限界に近づいている」と返答。大量の放射能を敷地外に広範囲にばらまいて被曝させ続けながら、汚染水だけは敷地内のタンク設置面積23万uにとどめるとは、今さらよく言えたものだ。

 原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長はことあるごとに「早く海洋放出せよ」とはっぱをかける。広大な海洋の中で、いないにも等しい1匹の魚から、たとえ1`cあたり10ベクレルのセシウムでも検出されること自体、恐ろしい海洋汚染だ。現在も福島県沖から放射能が検出される魚が出る。風評被害ではなく実害だ。基準値以下に希釈した海洋投棄は問題ないとして責任を取らない姿勢は、漁民や消費者から不信を買うだけだ。

 エネ庁職員は「小委員会の(海洋放出の)結論が急がれると言われても、そう簡単な問題ではない」と慎重な姿勢は見せた。

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