2018年06月29日 1532号

【戦争は封じられた 歴史的米朝合意を歓迎する 民衆の力で東アジア平和・非核化へ】

 6月12日、米朝首脳会談で、戦争状態終結をうたう板門店(パンムンジョム)宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化を明記した共同文書が調印された。民衆に取り返しのつかない惨禍をもたらす戦争策動は封じられた。東アジア平和構築に向けた歴史的なプロセスが始まり、平和・非核化の展望が開かれた。「対話否定・圧力一辺倒」は破綻し、安倍首相も日朝首脳会談実現を口にせざるをえない。朝鮮の脅威′実の軍拡・改憲路線もろとも安倍政権を打倒し、無条件の対話による国交樹立、拉致問題、植民地支配の賠償などの解決を実現しなければならない。

 史上初めて米朝首脳会談が実現し合意がされた意義は極めて大きい。朝鮮戦争終結と朝鮮半島の完全非核化は、米朝両国の基本方針となった。

米韓合同演習中止の衝撃

 会談後の記者会見でトランプ米大統領は「軍事演習をわれわれはやめる。軍事演習は極めて挑発的だ」と、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との対話が続く間は米韓合同軍事演習を中止することを表明。さらに在韓米軍について「私はいつかそうなること(撤退)を望んでいる。われわれは兵士たちを(韓国から)引き揚げさせたい」と述べ、在韓米軍削減・撤退論議を現実のものにした。

 この会談を受けて、トランプ政権は、非核化の具体策を話し合うため朝鮮との高官協議を直ちに開催すると表明し(6/13)、続いて8月に予定される米韓合同軍事演習を中止する方針を固めた(6/14)。

 朝鮮は、核開発の最大の動機は米国に対する「抑止力」であり自国の「安全の保証」のためと主張してきた。「安全の保証」が確信できれば、核を放棄する決定的な機会となる。その状況での米韓合同軍事演習中止と在韓米軍削減・撤退論検討は、朝鮮半島のみならず東アジアに劇的な緊張緩和をもたらす。

朝鮮戦争終結と基地撤去

 米朝共同声明では、朝鮮戦争の年内終結宣言や不可侵合意を明記した板門店宣言(4/27南北首脳会談)が再確認された。これは、米朝両国が朝鮮戦争終結への取り組みを行うことを意味する。在韓米軍だけでなく、沖縄をはじめとした在日米軍基地にも大きな変化をもたらす。

 日本国内7か所の在日米軍基地(嘉手納基地、普天間基地、ホワイトビーチ地区、キャンプ座間、横須賀海軍基地、佐世保海軍基地、横田基地)には、朝鮮国連軍が置かれている。朝鮮国連軍とは、1950年の朝鮮戦争開始時、ソ連欠席の安保理で採択、設置されたもので、米軍司令官が指揮権を持つ。国連は関与できず、以降、米国の戦争介入の手段となってきた。

 特に、嘉手納基地を中心とする沖縄の米空軍は朝鮮戦争と深く関わってきた。朝鮮戦争では、開戦1年間で嘉手納基地からB29など延べ5807機が出撃、約5万dの爆弾を朝鮮半島に投下(休戦までに朝鮮国連軍全体では60万dを超える)。その後「朝鮮情勢から生じた軍事的必要」として、在沖米軍は基地機能が強化され、米韓合同軍事演習にも常に参加している。

 しかし、朝鮮戦争が終結すると、沖縄に国連軍基地は必要なくなり、朝鮮からすれば攻撃対象ではなくなる。

 安倍政権は、朝鮮の「脅威」に対する「抑止力」として在沖米海兵隊の存在意義を主張してきたが、その根拠が崩れる。普天間基地も辺野古新基地建設も不要だ。

 沖縄だけにとどまらない。安倍が秋田や山口に配備を通告している、朝鮮ミサイルへの防衛システムとされるイージス・アショア、敵基地攻撃用長距離ミサイルの導入も大義名分を失う。同じく朝鮮のミサイル対策とされる韓国星州(ソンジュ)のTHAAD(サード)(高高度防衛ミサイル)も配備の根拠がなくなった。軍拡の最大の口実が奪われたのだ。

戦争勢力の巻き返し許すな

 安倍は、日朝首脳会談を可能な限り早期に実現するよう指示した(6/14)。政府関係者は「各国がはしごを下り始めているのに、日本だけはしごの上で騒いでいたら拉致の協議には入れない」と言う(6/15朝日)。当然だ。安倍ら戦争屋たちも「対話拒否・圧力一辺倒」からの軌道修正を余儀なくさせられたのだ。

 しかし、戦争勢力の執念深い巻き返しは続き、朝鮮敵視政策を変えてはいない。米朝会談の当日、安倍は朝鮮の核・ミサイル施設を監視するための偵察衛星を種子島宇宙センターから打ち上げた。小野寺防衛相は「米韓演習や在韓米軍は東アジアの安全保障に重要」「(イージス・アショア配備を)着実に進める」(6/13)と、会談後でさえなお演習や軍拡に執着している。

 さらに、今回の合意について、政府与党やマスコミを使って「中身がない」などの難癖をつけている。河野外相は「今のところ(朝鮮に対する)体制保証は与えられない」(6/14)と明言した。

直ちに日朝国交交渉へ

 重要なことは、信頼関係を築き、合意した内容の実現へ対話を重ねていく、そのスタートにたったことだ。68年間の敵対関係にあった米朝両国の問題が、一度の会談で解決することなどできないのは誰でもわかる。歴史的な平和への転換点となった意義を低め、緊張を自らつくり出して改憲と軍拡を進めようとする勢力を徹底して批判し封じ込めなければならない。

 平和を願う東アジアの民衆とともに、戦争・改憲路線にしがみつく安倍政権を打倒しよう。日朝平壌(ピョンヤン)宣言(02年)に基づき、「相互の信頼に基づく協力関係が構築」されるよう敵視政策をやめさせ、軍縮、基地撤去を迫ろう。ただちに無条件の対話で国交交渉開始を要求し、戦後補償、拉致問題など日朝間の諸課題を解決させよう。民衆の闘う力が東アジアの平和をゆるぎないものとする。

米朝首脳会談の共同声明(要旨) 2018.6.12

1.米国と朝鮮は、平和と繁栄を求める両国国民の願いに従って、新たな米朝関係の確立に取り組む。

2.米国と朝鮮は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制の構築に共に取り組む。

3.2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。

4.米国と朝鮮は、戦争捕虜/行方不明兵の遺骨回収に取り組む。その中には、すでに特定されている遺骨の即時帰還も含まれる。



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