2018年06月29日 1532号
【全原発廃炉へ 大津波の新しい原因 進む海底地滑りの研究 若狭湾原発群を襲う可能性】
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5月9日、関西電力は大飯原発4号機の再稼働を強行。現在稼働中の3基に加え、さらに再稼働を増やそうとしているが、それら若狭湾の原発の危険性を浮かび上がらせる自然現象が明らかになってきた。海底の巨大地滑り現象である。海底地滑りは日本海でも起こり得るとされ、再稼働が進む若狭湾の福井県高浜原発・大飯原発や福岡県玄海原発の安全性にも影響を及ぼさずにはおかない。
各地に大崩落の痕跡
5月20日付毎日新聞によると、産業技術総合研究所の岡村行信・主席研究員らは、沖縄県の先島諸島で約1万2千人が死亡した1771年の八重山地震津波(明和の大津波)は、海底の巨大地滑りが原因だった可能性が高いとの分析結果を発表した。
発生した津波が30b級なのに対し、当時の地震規模はそれほど大きくなかったとみられ、原因がよくわかっていなかった。岡村研究員らは石垣島の南方に位置する琉球海溝の北側で、東西約80`、南北約30`におよぶ地滑りの痕跡を発見した。海溝型地震を引き金に海溝の北側の斜面が大崩落したとみられ、被害状況とも整合するという。
昨年9月には徳島大の馬場俊孝教授らが、徳島県南部で多数の死者を出した1512年の永正(えいしょう)津波は海底地滑りが原因で局地的に起きた可能性が高いと発表している。永正津波が発生した当時、南海トラフ沿いの他の地域では大津波の記録が見つかっていないことから、「謎の大津波」とされてきた。
馬場教授らの調査の結果、大津波の被害地の24`沖にある幅約6`、高さ約400bの崖が海底地滑りでできたとみられることが判明したという(昨年9/13朝日)。
7年前の東日本大震災の巨大地震でも、宮城県の沖合の海底では、地震後に高低差100bもの巨大な段差ができていた。これについて、複数の専門家が「海底地滑り」が起きたと指摘しているという。
さらに、阿部郁男・常葉(とこは)大教授らの研究によると、南海トラフと並んで巨大地震が切迫していると指摘されている北海道沖の「千島海溝」で幅20`にわたる大規模な海底地滑りが発生した場合、襟裳岬で20b余り、釧路町では15bに達する津波が到来するという(3/13NHKニュースウェブ)。
日本海でも起きる可能性
これらの研究が重要なのは、日本海でも巨大津波が起こりうるからだ。
大飯原発差し止め訴訟(京都地裁)で、関西電力は「日本海側には、海溝型のプレート境界は存在せず、津波による水位上昇量は少ないと考えられる」とし、大飯原発の主要な建屋の敷地高さ(TP<東京湾平均海面>+9・3b以上)を踏まえると「津波が本件発電所の安全性に影響を及ぼすことがないと判断した」と主張している。
しかし、1026年に島根県益田周辺を20b超の巨大津波(万寿津波)が襲った記録が残っているが、地震の被害は残っていない。この津波についても、先の岡村研究員は海底の堆積性斜面崩壊による津波の可能性を指摘する。
海底地滑りを起こす地形は日本海の能登半島、丹後半島の沖合にもあり、特に後者は幅200`に及ぶ崖が海底に存在するという。断層地震などをきっかけに海底地滑りが発生すれば、これまで想定していない巨大津波が若狭湾の原発群を襲う可能性も考えられる。
過去の巨大津波の原因として海底地滑りが浮上してきた以上、それが各地の原発に及ぼす影響についての詳細な調査・研究が必要だ。その結果を各地の訴訟、運動、世論を高める力とし、さらに再稼働阻止、全原発廃炉への闘いを広げなければならない。
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6月14日、東京電力が福島第2原発の廃炉方針を公表し、ようやく福島県内全原発が廃炉となる。福島のみならず、地震・津波大国日本ではただちに全原発廃炉しかない。
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