2018年07月06日 1533号

【ドクター林のなんでも診察室 ねつ造しやすい薬評価制度を作る?!】

 6月10日、国会前集会で安倍内閣のデータねつ造や文章改ざんの数々を再確認しました。

 ねつ造といえば、血圧を下げる降圧薬ディオパン評価の論文が世間を騒がしたのが2014年です。他の降圧剤ができなかった脳卒中などを予防できる、とデータをねつ造して売り上げを伸ばしたのです。しかし、このねつ造がばれたので、少なくともディオパンが合併症を減らすとの効能は否定されました。

 ばれたのに、ねつ造のデータで作った「働き方改革」法案や、うそを基にした加計学園獣医学部の認可はそのままです。こんなことが許されれば、薬や自動車などあらゆる製品もねつ造したデータで承認されることになり、社会生活はめちゃめちゃになります。今、ねつ造・改ざんがしにくい制度を作り守ることが特に重要と思われます。

 ところで、新しい薬の認可は人間での試験が不可欠です。患者を平等に分け、新薬と擬薬などを使う群を作り、群間で効果と副作用を厳密に比較する方法が最も科学的で世界の基準です。この方法でもねつ造はされますが、ばれることが多いのです。

 最近では、明確な効果を証明できる薬はほとんど作れません。それなら、ディオパンのように、効果をねつ造し、販売できればぼろもうけです。それにしても、科学的方法は金がかかるし、ねつ造や改ざんをばれないようにするには大変です。

 そこで、制度そのものをごまかし易いものに変えてしまおうというのが、巨大製薬企業の願望です。その先頭に立つのが日本の薬務行政です。昨年10月、世界で初めて、一部の薬剤の評価方法をあいまいなことが多い日常診療の「電子化データ」に代える制度を、国会審議を経ず厚労省課長通知で導入。これを、製薬企業の要望で薬や医療機器の基本法である「薬機法」(医薬品医療機器等法、以前の「薬事法」)に組み入れ、法制化を検討しています。さらに、これまでの比較群を置いた臨床試験による厳密な評価方法そのものを無くそうとも画策しています。これでは、比較する患者や薬の使い方などが不明確、かつデータがブラックボックス化され、ねつ造・改ざんもばれにくくなります。トランプの米国でさえ、まだこうした方法が妥当かどうか「研究中」で、実施はできないでいるものなのです。

 安倍内閣は、小野薬品工業と米国企業が共同開発した抗がん剤「オプシーボ」を、世界に先駆けてべらぼうに高い値段で承認しました。それが同系列薬を超高額化し、日本と世界の医療財政を圧迫しています。同様に、安倍内閣の下で世界に先駆けて、ねつ造が簡単な薬の評価制度を作ろうとしているのです。

 世界の人びととの連帯で安倍内閣を倒し、科学的薬剤評価を守り発展させなければなりません。  (筆者は、小児科医)
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