2018年07月06日 1533号

【加計理事長のハンパ会見/地震とサッカーのどさくさに紛れ/アベ友は今日もゲスだった】

 学校法人・加計(かけ)学園の加計孝太郎理事長が6月19日、突然記者会見を開いた。一連の疑惑について「説明責任を果たせ」との声に押されてのことだろうが、大阪北部地震とサッカーW杯の報道が重なる今なら、「たいしたニュースにはなるまい」との魂胆が見え見えである。さすがは安倍首相のおともだち。見事なゲスっぷりである。

卑劣な抜き打ち

 「加計理事長、半端ないって。地震の混乱を狙って記者会見を開くなんて、そんなんできひんやん普通。人でなしのやることや」。いま話題の「半端ない」で加計理事長のふるまいを表現してみた。元ネタはサッカー日本代表・大迫勇也選手の卓越した技術を讃える言葉だが、加計学園の記者会見のほうは半端すぎて話にならない。

 獣医学部新設をめぐる問題で加計理事長が取材に応じるのは初めてのこと。逃げてばかりでは批判は収まらないと、本人もようやく観念したのだろう。ただし、厳しい追及は受けたくない。そこで前日に大きな地震が発生し、報道機関が対応に追われているタイミングを見計らい、抜き打ち的な会見を開いたというわけだ(官邸サイドの入れ知恵かもしれない)。

 会見を開くことを地元の記者クラブにFAXで告知したのは開始時刻(午前11時)の2時間前。これでは東京のメディアが岡山市内で行われた会見に参加することは難しい。なんとか駆けつけた大手メディアもあったが、学園は地元記者クラブ加盟社以外の入場を認めなかった。

 会見の内容も「説明責任を果たす」とは程遠いものだった。愛媛県の文書に記されていた2015年2月の安倍晋三首相との面会を加計理事長は全否定。学園の事務局長が県に誤情報を伝えたとの主張をくり返した。裏付けとなる根拠を問われると「記憶にも記録にもない」の一点張り。軽い内部処分と「おわび」で幕引きをしたつもりなのだから、ふざけている。

 質問が続く中、学園側は加計理事長の「校務」を理由に30分足らずで会見を打ち切った。あの日大アメフト部の監督よりひどい対応である。だが、メディアの扱いは比べ物にならないほど小さい。震災に加え、会見当日はワールドカップの日本対コロンビア戦。新聞やテレビの報道枠は埋まっていた。ドサクサ作戦は効果があったのである。

利権絡みの関係

 「何十年来の友達だが、仕事のことを話すのはやめようというスタンスでやっている。(首相は)こちらの話に興味はないと思う」。安倍首相との関係について加計理事長は会見でこう語った。安倍首相の側も「私と加計さんの関係において、お互いの立場を利用して何かを成し遂げようとしたことはただの一度もない」と強調する。

 これは大ウソだ。2人はただの遊び仲間ではない。安倍は「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ」と周囲に自慢していたという(週刊文春17年4月27日号)。事実、遊興費は加計理事長が負担していた。本人いわく「(安倍には)年間1億ぐらい出しているんだよ。あっちに遊びに行こう、飯を食べにいこうってさ」(同)

 安倍は子分の面倒も加計学園に見てもらっていた。落選中で経済的に困っていた萩生田光一(現自民党幹事長代行)を学園が経営する大学の客員教授に押し込んだのだ。萩生田はその後首相補佐官として、獣医学部新設のライバル校つぶしに主導的な役割を果たすことになる。

 安倍一派の選挙も加計理事長は助けている。自民党が大敗を喫した2009年の総選挙の際には、グループ校の職員に出張命令を出し、安倍たちの選挙区に運動員として送り込んだ。交通費や宿泊費は学園の負担である。

 「教育者ではなく商売人」と評される加計理事長。獣医学部の新設に執念を燃やしたのも、授業料収入だけで巨額の儲けが見込めるとの打算による。そんな人物が友人のよしみだけで手厚い支援を行うはずがない。ビジネス上の見返りを期待するのは当然だ。

 加計学園は政府の「教育の自由化」政策に便乗して経営規模を拡大してきた。その背後には安倍晋三の存在が常にあった。獣医学部の新設についていえば、首相直轄の国家戦略特区を使い、加計学園だけが通ることができるレールを敷いたのだ。「規制緩和」とは国家権力の私物化のことだった。加計問題はその典型的事例にほかならない。

安倍も震災を利用

 「類は友を呼ぶ」と言うが、安倍首相も震災を利用した追及逃れを行っている。地震発生当日の6月18日、参院決算委員会が予定通り行われた。自民党議員の一部は「災害よりもモリ・カケ追及優先」と野党を非難するツイートを拡散しているが、これは悪質なデマだ。実際には野党側が開催延期の提案をしたにもかかわらず、自民党がこれをはねつけたのである。

 この日予定されていたNHKの国会中継は地震報道のため中止となり、通常のニュース番組も地震シフトに移行することが予想された。「今ならひどい答弁をしても注目されず、スケジュール消化にはうってつけ」。そうした安倍官邸の思惑を自民党が忖度したことは明らかだ。まさに加計の手口、いや安倍の手口というべきか。

 この2人に、深い信頼で結びついた「腹心の友」という言葉はふさわしくない。利権でつながるゲス友だ。卑劣極まる幕引き策動を許してはならない。      (M)

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