2018年07月13日 1534号

【たんぽぽのように(2)韓国地方選報道が伝えないもの 李真革】

 6月13日、韓国では第7回全国同時地方選挙が行われた。結論から言えば、ともに民主党(以下、民主党)の圧勝だった。

 民主党は、広域自治体(道、ソウル特別市、広域市)長17のうち14か所で勝利し、歴史上初めて慶尚(キョンサム)南道知事、プサン広域市長、蔚山(ウルサン)広域市長を獲得した。保守性向が強い慶尚道の変化は、韓国政治を苦しめていた地域主義が崩壊したことを示す。また、基礎自治団体(郡、市、特別市等の区)長、広域議員、基礎議員も民主党が圧勝し、朴槿恵(パククネ)退陣と文在寅(ムンジェイン)大統領当選、南北対話などにつながる流れは逆らえない大勢になった。

 民主党の圧勝は自由韓国党の崩壊を意味する。ろうそく集会の原因を提供した非民主主義的な政治勢力、対立と戦争を煽る政党の基盤は急激に縮小された。

 一方、進歩政党である正義党がかなりの成果を得た。昨年の19代大統領選挙と比較すると、正義党は、得票数が増加した(25万232票増)唯一の政党で、広域比例得票率でも8・8%(226万7690票)で飛躍的な成長を成し遂げた。

 ところが、ソウル市広域比例代表得票率を見てみよう。政党得票率の50・92%を得た民主党は議席総数110議席のうち102議席を占めた。議席占有率は92・73%に達する。だが、得票率9・69%を得た正義党はただ1議席のみ。議席占有率は0・90%だ。明らかにおかしい。得票率と実際の議席占有率の間のこうした乖離(かいり)は、勝者独占の小選挙区制に起因する。

 この不合理を防止するために得票率に従って公正に議席を配分する「連動型比例代表制」を導入しようと市民社会と進歩政党が粘り強く要求しているが、今選挙でも反映されなかった。自由韓国党と民主党はこの点ではいつも意見を共にした。民主党が今回の選挙で圧勝したとして選挙制度改革を放置すると、ブーメランのように市民の批判が戻って来るかもしれない。

 6月30日、文在寅政権発足以来最大の集会がソウルの光化門(クァンファムン)広場で開かれた。民主労総は「6・30非正規撤廃全国労働者大会」を開き、「非正規のない職場と差別のない同一賃金争奪、実質的財閥改革のための下半期ゼネスト総力闘争を決意する」と宣言した。 8万人余りの集会参加者たちは、政府の労働政策が後退していると強く批判した。実際、文在寅政権は「全教組の法外労組(非合法扱い)の取り消し不可の立場」を表明するなど、自ら推進すると約束していた政策さえ覆している。

 2回の南北首脳会談と史上初の朝米首脳会談で、朝鮮半島をめぐる和解気運が熟しているのは事実である。しかし、民主党の文在寅政権はいまだ労働者より財閥と資本の側に近づいている。選挙を通じて変えられることは何か、の悩みは続くだろう。

(筆者は市民活動家、大阪在住) 
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