2018年07月13日 1534号

【「働かせ方大改悪」成立強行/法案成立でも諦めない/高プロ適用許さず廃止の闘いへ/これがあなたを追いつめた日本の姿】

こんな国会でいいのか/28日

 過労死促進の高プロ(高度プロフェッショナル=残業代ゼロ制度)導入を含む「働き方改革」一括法案は6月28日参院厚生労働委員会で、29日同本会議で採決が強行され、成立した。「働いて命を失うことがあってはならない」―過労死遺族らは高プロの実施を許さず、廃止を求める新たな闘いに乗り出す。

 28日、自公与党は野党が提出した参院厚労委員長解任決議案を本会議に上程せず、委員会での採決を強行。日本労働弁護団と東京過労死を考える家族の会は参院議員会館前で抗議の集会を開いた。

 東京家族の会の中原のり子代表は「この国は数の力で、われわれの声も聞かず大事なことを決めてしまうのか。こんな国会でいいのか」と怒りをぶつける。「労働者の誰も望んでいない。“仕事が終われば早く帰れる”というが、帰れるわけがない」と指摘するのは、労働弁護団の棗(なつめ)一郎幹事長。

 採決を受け入れた国民民主党の議員が「思いはみなさんと同じ」と話し始めると、「だったら採決を止めろ」とヤジが飛ぶ。全労連の伊藤圭一雇用・労働法制局長は「高プロに反対と言いながら国会前で反対運動を一度もせず、“法案の速やかな成立”を求めている労働団体がある」と危機感をあらわにした。

 採決強行を見届けた後、集会にかけつけた過労死遺族からは「残る人生、高プロの先に見えるこれからをしっかり注視し、過労死という言葉を死語にさせない。若者を殺さない」などの発言が。厚労委委員でもある福島みずほ参院議員は「とても悔しい。法律が過労死をつくってはダメ。国会は、厚労省は、責任とれるのか」と問いかけた。

過労死遺族が黒衣で会見/29日

 29日、本会議採決強行後の記者会見。過労死遺族が黒衣に身を包み、愛する人の遺影を前に次々マイクをとる。

 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表は「過労死防止法が4年前に成立した同じ会期末に、よもやそれと真逆の法律の成立を目の当たりにするとは」と落胆を隠さない。夫を過労自殺で亡くした小林康子さんは「人の命が失われないと働く体制は改善されないのか」、中原のり子さんは「夫が残した言葉は“不眠不休、限界を超えた”。限界まで働かせたら人は病む。命を失う」と話した。

 過労自殺した電通社員、高橋まつりさんの母、幸美さんは「可決のとき心でまつりに『これが日本の姿。あなたを追いつめた日本の姿だよ』と話しかけた。誤った法律を作らせないよう見守るのは国民の責任。娘を守れなかった私はその責任を果たしたい」。

 NHK記者だった娘の未和さんを過労死で奪われた佐戸恵美子さん。「この会見場のどこかにも未和がいそうで、どうしても未和の姿を探してしまう。付帯決議のインターバル規制を11時間の法規制にするよう訴えていく」。渡辺しのぶさんは裁量労働制で働いていたエンジニアの夫を亡くした。「全国に過労死遺児がたくさんいる。高プロの世の中に送り込み、父親と同じ亡くなり方をさせるわけにはいかない」と力を込める。

 過労死弁護団全国連絡会議の玉木一成事務局長は「高プロの対象業種や具体的運用は厚労省令に委ねられている。廃止を求めるとともに、法律が悪用されないよう活動しなくてはならない」と述べた。

 寺西さんも「法案が通っても諦めない。労働政策審議会の傍聴を続ける。乱用や拡大解釈を許さない声を上げ、過労死防止対策大綱に盛り込ませる」と表明した。

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