2018年07月20日 1535号

【ミリタリーウォッチ/自衛隊・在日米軍/「いずも」空母化とステルスF-35B導入/直接攻撃力めざす安倍軍拡】

 昨年12月末、米海兵隊が保有するステルス戦闘機F―35Bを海上自衛隊の護衛艦に搭載し運用を可能にするための艦船の改造=「空母化」について、防衛省が検討を開始しているとの報道が流れた。今年に入って2月8日衆院予算委員会で、小野寺防衛大臣が海自の「ヘリ空母」とも言われる護衛艦「いずも」に艦載できる航空機の調査を建造業者に委託していたことを明らかにした。続く3月2日の参院予算委員会では、共産党小池議員の質問に対して、F―35Bの自衛隊への導入やいずもへの搭載などは決まっていないと答弁。4月27日には業者からの報告が出されたが、公開された報告書は「空母化」に必要な具体的な改修内容や工期、経費などはすべて黒塗りされていた。

例のない遠征能力

 「いずも」の「空母化」については、防衛省はこれまでのところ「米軍機の後方支援が目的」として米海兵隊岩国基地に駐留を開始したF―35B(10機)の存在を挙げたりしているが、3月20日に自民党の安全保障調査会が政府に出した提言では、「F―35Bの取得」と戦闘機などが離着艦できる「多用途防衛空母」の自衛隊への導入をはっきりと求めている。ちなみに「多用途防衛空母」などという軍事用語はない。まして「専守防衛」なら「空母」はいらない。

 F―35は米軍需産業ロッキード・マーチンによる最新のステルス戦闘機で、A、B、Cの3タイプがある。

 F―35Aは空軍向けで通常離着陸型、F―35Bは海兵隊向け、F―35Cは海軍向け。日本はすでに航空自衛隊用にAタイプを42機(1機100億円超)も調達する計画だ。

 B型とC型はいずれも艦載機で、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型。

 とくにF―35Bは、機体を浮かびあがらせるための排気ノズルとリフトファン(上昇用送風機)との組み合わせシステムに特徴があり、海兵隊幹部は「他に例のない遠征能力を実現する」と「称賛」している。これまでの空母に備わっていたカタパルト(射出装置)や着艦・停止のためのアレスティングワイヤー等の装備がない艦船からの戦闘機の発着が可能となる。

戦争法で下準備

 日本の海上自衛隊は近年、艦橋(船の甲板上の建物)部分を片寄せた全通甲板型のヘリ搭載護衛艦を建造・配備してきたが、今後は短距離離陸(離艦)と垂直着陸(着艦)が可能で、相手への直接攻撃力を持つ固定翼航空機・戦闘機も搭載できる「空母」を持つことになる。そのベースを準備してきたのが、一連の安保法制(戦争法)だったのではないか。

 日本はこれまで、自衛隊による攻撃型空母の保有は否定してきた。だが、ここに来て、それが崩されつつある。それも、朝鮮半島における南北首脳会談と米朝首脳会談が実現するという、東アジアの非核化・平和構築の新たな展望が見えてきた今に、である。この動きに背を向け、世界で孤立し、相も変わらず「抑止力」をふりかざしてひたすら軍拡路線を突っ走る安倍政権。もう退陣しかない。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会

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