2018年07月20日 1535号

【未来への責任(253)ユーラシアチケット 必ず現実に】

 韓国鉄道公社は今、ソウル駅で「ソウル―ロンドン」間を走るユーラシアチケットを販売している。現時点ではソウルとロンドンは鉄道でつながってはいない。それでも1枚56万ウォン(約5万5千円)のこのチケットは毎日3千枚も売れているという。

 かつて民衆歌謡グループ・コッタジは『ソウルから平壌(ピョンヤン)まで』でこう歌っていた。「ソウルからピョンヤンまでタクシー料金5万ウォン/ソ連も行けるし/月にも行けて/行けないところはないのに/光州(クァンジュ)よりもっと近いピョンヤンはどうして行けないのか/(中略)/クラクション鳴らして/ソウルからピョンヤンまで/夢の中でも思い切り走ってみるんだ」

 そして現在、韓国の人びとは56万ウォンをはたき、必ず現実のものとなると信じて“夢”を買っている。

 4月27日の南北首脳会談と「板門店(パンムンジョム)宣言」から2か月半が経った。「宣言」は着実に履行されつつある。南北離散家族の再会事業は8月20〜26日に金剛山(クムガンサン)で実施することが決まり、家族名簿の交換も行われた。それだけではない。6月7日、韓国は朝鮮の賛成を得て、「国際鉄道協力機構(OSJD)」への加入が認められた。これにより韓国は、中国横断鉄道(TCR)とシベリア横断鉄道(TSR)を含め、28万キロに及ぶ国際路線の運営に参加できることとなり、韓国から朝鮮を経てヨーロッパに向かう道が開けた。これは、「宣言」の「(1)南北関係の改善・発展による共同繁栄と自主統一」の「(6)民族経済の均衡ある発展と共同繁栄の推進」の一環としての「東海(トンヘ)線および京義(キョンウィ)線の鉄道と道路を連結、現代化」を履行するものだ。ユーラシアチケットの“夢”が夢では終わらない可能性が出てきている。

 また、黄海上での南北海軍艦艇間の「海上ホットライン」が10年ぶりに再開された。偶発的な軍事衝突を回避するための措置が発動されたのである(7/1)。さらに韓国は軍事境界線に近い最前線部隊の施設新設を「暫定保留」した。これは軍事境界線付近に配備された朝鮮の長距離砲撤去、非武装地帯付近の軍部隊の後退を促すための措置と見られる。

 このように「宣言」の「(2)軍事的緊張の緩和と、戦争の危険の解消」の「A北方限界線一帯を平和水域とする」、「(3)朝鮮半島の恒久的な平和体制の構築」の「(2)段階的に軍縮を実現する」も具体化されつつある。

 それゆえに、文在寅(ムンジェイン)大統領はロシア訪問時に「今、朝鮮半島では歴史的な大転換が起きている」「南北米は戦争と敵対の暗い時間を後にし、平和と協力の時代に進んでいる」と言明した(6/21ロシア下院演説)。この演説を「楽観的に過ぎる」と見る向きもあるかもしれない。しかし、これは朝鮮半島と東アジアの未来をひらく決意の表明だ。

 他方、安倍政権は非核と軍縮の流れに抗(あらが)い、イージス・アショア導入、辺野古新基地建設に固執し、拉致問題を口実に日朝国交正常化への道を閉ざしている。今こそこれを転換させよう。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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