2018年07月20日 1535号

【給食無償化へ一歩踏み出そう/中学校給食がない唯一の政令市/子どもの笑顔が輝く街へ/横浜市でタウンミーティング】

 横浜市は全国20の政令指定都市でただ一つ中学校給食を実施していない。子どもたちに温かく安全な給食を、と「平和と民主主義をともにつくる会・かながわ」は6月24日、同市鶴見区で「給食の無償化をめざして」をテーマにタウンミーティングを開いた。

 埼玉県内の小中学校で38年間事務職員を務めた後、通信制大学院に通い、現在は「教育行財政研究所」を主宰する中村文夫さん(著書に明石書店刊『子どもの貧困と教育の無償化』など)の話が、議論の柱を提供した。

 中村さんはまず、安倍内閣が昨年12月に閣議決定した2兆円規模の経済政策パッケージに触れた。「幼児教育・保育の無償化と高等教育の無償化に8000億円ずつ投入する。ひと言も書かれていないのが、義務教育。学校現場を知らない人たちは、義務教育はすでに完全に無償と考えているのだろう」

義務教育の保護者負担

 しかし、実際は義務教育段階でも多くの保護者負担がある。文部科学省の2016年度の調査によると、1年間に公立学校が保護者から徴収する額は、小学校で1人あたり10万4454円、中学校で17万7370円。小学校ではその半分近く、42・5%を給食費が占めている。給食を無償化すれば保護者負担は半分に減ることになる。

 通学関係費も軽視できない。制服やランドセル、カバン、靴の費用が含まれ、負担は重い。「片方には、中学校の制服を採寸はしたがお金がなくて買えず、入学式を欠席する子がいる。もう片方では、銀座の小学校がアルマーニのデザインした制服を導入する。地域・階層がすさまじいまでに分化している。教育によってさらに助長する新自由主義政策だ。親の資産とは関係なく同じ場所で勉強することで、それぞれの違いを理解しながら育っていく―これがなければ社会は分裂する」と中村さんは警鐘を鳴らす。

 ところで、「無償」であるはずの義務教育で給食はなぜ無償ではないのか。根拠とされるのが、給食施設費・運営費以外の経費の保護者負担を定めた学校給食法11条だ。しかし、中村さんは「給食を『食育』として、教育活動の一環に位置づけるなら、無償化すべきだ」と主張する。

 欧米では、フィンランドは無償。英国は保守党政権下、子どもの貧困化が進んだため、数年前に小学校低学年の給食を無償にした。米ニューヨーク市も学校給食無償化を始めた。そして日本でも、全国1741市区町村のうち105自治体で給食を完全無償化し、一部補助を含めると338、全市区町村の約20%が公的補助を実施している。

 そんな中で、神奈川県は無償化はゼロ、一部補助も4市町にとどまる。中学校給食の実施率が低いのも特徴で、東京新聞の調査(16年5月)では27・1%。首都圏他都県の96・9〜100%と比べ、大きな差がある。横浜市が苦肉の策として昨年から始めた民間業者の配達弁当「ハマ弁」も利用率はわずか1・3%.中村さんは「自治体の施策でこのぐらい子どもの育ち方、教育機会の平等の保障が違ってきている。横浜は日本一大きい自治体(市町村)だから率先していいものを見せてほしい」と期待を表明した。

みんなの力であと一押し

 ここで壁になるのが、保護者の所得の差による教育格差を容認する人が6割を超えていること。朝日新聞とベネッセの共同調査で明らかになった(4/5朝日)。また、横浜で中学校生活を送った人にとっては給食がないのは当たり前。タウンミーティング参加者の一人も「私は横浜市で生まれ育ち、中学校給食を知らない。社会問題だと頭では理解しても、すっと怒りがわいてこない。こういう人はかなり多い。どう訴えたらいいか」と問いかける。

 中村さんはこうも語った。―子どもは「社会の宝」。成長して社会の構成員となり、次の時代を担う。だから、社会が面倒を見なければならない。義務教育は9割まで無償化できている。あと一押しするのは、みなさんの力。教科書も黙っていたらずっと親が買っていただろう。みなさんの取り組みがあってようやく教科書は無償になった。

 「ともにつくる会」の青島まさはる代表は「親子方式(自校給食の小学校が隣接中学校に給食を提供)なら60億円、自校方式でも130億円で中学校給食は実現可能。小学校給食の無償化も90億円でできる。新庁舎に600億円もかけるよりこちらが先。子どもの笑顔が輝く横浜市をつくりたい」と決意を述べた。

 「ともにつくる会」は近く「中学校の給食実現、学校給食の無償化を求める陳情署名」(案)をスタートさせる。



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS